FC2ブログ

BullionVault

2016年、砂上の米個人消費の楼閣は倒壊するーUPDATE1


米経済が絶好調らしいのを理由とする12月利上げが迫っていますが、第4四半期になって景気の減速が顕著になってきたようです。
第3Qの個人消費は、3.2%増から下方修正されたものの3.0%増と比較的強いものでした。
個人消費の7割程度を占めるサービス消費が牽引しているようですが、これは、個人が自由に好きなものに金を使った裁量消費ではなく、医療費などの高騰が大きく寄与しているようです。
アメリカの企業は安くおいしくて満腹感があり、そして健康に悪くて中毒性のある食べものを大量生産してきました。アメリカで大量に生産される小麦やとうもろこし、砂糖を加工した食品です。これでアメリカは世界中に不健康を輸出しましたが、国内でも貧困層を中心に大量消費されています。格差拡大に大きく起因するストレス発散のため、アメリカでは凶悪犯罪が増え、毎日のように銃の乱射事件が発生しています。また、薬物が大流行しています。刑務所はパンパンです。世界の囚人の半分はアメリカ人で、その管理費(一人あたりの費用は生活保護費よりもかかる)が財政を圧迫しています。
しかし、もっとも手頃なストレス解消手段は食べることです。バフェット推奨のジャンクフードやファーストフード、そしてタバコでアメリカの貧困層はでぷくぷく太らされて健康が悪化しています。うつ病も増えています。高価で定期的なキャッシュフローがみこめる血圧やコレステロールの薬、うつ病の薬が飛ぶように売れています。これがアメリカの製薬会社の収益の主力をなしています。
アメリカの医療費は、OECD諸国のなかで突出しており、今も暴騰が続いています。GDPの5分の1程度のシェアを占めるようになっているようです。
アメリカのある製薬会社の若いCEO(堀江や橋下など日本でもよくあるタイプのリバタリアン)がエイズやHIVの治療薬を1500円から8万円に値上げしたことが問題になっていました。
こんな事許されない!$13の薬が$750に5000倍も値上げ!悪魔に心を売った製薬会社社長の素顔

これは今始まった話ではありません。WTOのTRIPs協定によって、大手製薬会社の特許権が強化されました。発展途上国や新興国はIMFなどから融資を得るために、不利なルールであることを承知でWTOに加入せざるを得ません。
このレントシーキングによって、アメリカの大手製薬会社の株主である資本家の利益を守られましたが、安いエイズ治療薬が手に入らなくなった発展途上国では、救われるはず命の多くが失われました。
HIV感染者に悲劇をもたらすWTOの知的所有権保護
日本もTPP締結によって薬価の高騰が懸念されていますのでひとごとではありません。
このように知的財産権を乱用して産業の発達を阻害してきたファイザーなどは、租税回避のために、アラガンを買収して本社を法人税の安いアイルランドに移転させるそうですが、これも米国内で批判されています。
海外での売上を国内に送金すると、税がかけられ、富の再配分に使われます。
そのため、アップルなどのグローバル企業は、その利益を自社株買いに使って資本家に還元しています。
アメリカの大学は私立優位であり、リバタリアンが理想とする自由競争によって学費が高騰しています。そのため、富裕層が圧倒的に入学に有利になっています。
貧困層は、奨学金を借りるしかありませんが、この奨学金は銀行のロビー活動によって自己破産が認められなくなっています。日本のように気軽に借りることはできません。借りるのは背水の陣でハイリスクです。
アメリカの労働市場の改善は、単純労働の高齢者向けがほとんどで、高等教育を受けた若者が望む仕事はどんどん減っています。安いバーテンダーなどの仕事では高額な奨学金を返済できません。奨学金の返済に追われて結婚もできませんし、家も買えません。
日本同様、アメリカでも若者の家や自動車離れがすすんでいます。これが個人消費のネックになっています。
生産性の高い仕事の需要が減っているのは、景気が悪いといった循環的なことも理由としてありますが、技術革新やグローバル化による新興国のキャッチアップによる構造的なものが大きいと思います。
このような給料のいい仕事が減っていく不安な将来に備えて自分に投資しろとアメリカでは、大学教育バブル(生涯学習バブル)が煽られてきました。特にリーマン後はそうです。
しかし、全体としてみれば、大学に入学して得られる期待値、勝率、投資効率は当然に低下しています。しかし、チャレンジする個人、個人は自分が勝者になれると信じて投資しています。
このため、今の膨れ上がった教育費のローンはその多くが不良債権になる予備軍です。
アメリカの大学入学は、受験戦争が激しいインドや中国、韓国などに比べて簡単です。日本の入試は昔に比べて簡単になりましたが、それでもアメリカよりは高校生は大変でしょう。
アメリカは、日本などとちがって、入学した後は大変でなかなか卒業できませんが、これも、アルバイトをしないで勉強に専念できる富裕層の子弟に有利に働きます。
現在、アメリカでは能力による成り上がりが非常に困難になっています。アメリカンドリームはもうはるか昔の話で、アメリカは主要国のなかでは、もっとも階層間移動が困難な国になっています。日本も小泉以降、安部や橋下などのポピュリストが推進してきた新自由主的な政策で階層の固定化が進んでいます。景気の悪化がそれに拍車をかけています。
能力主義を過大に重視するリバタリアンは、自由競争、市場、アダム・スミスの見えざる手、創造的破壊なども万能としていますが、競争や市場に自由にまかせていれば、逆に能力主義ではなくなるというのが現実社会です。合成の誤謬です。議会制民主主義もそうです。議会制民主主義を導入していない中国の政治が徹底した能力主義なのにたいして、日本の政治は、長い自民党の一党独裁の歴史をみればわかるようにお金と世襲で、選挙の結果が決まります。金があるやつがマスメディアを操り世論をコントロールして選挙に勝ち、その子弟がその後を継いでいきます。
こういった、リバタリアンの依拠する「神の手万能論」については、ジョン・ロールズ、ナシーム・ニコラス・タレブやダニエル・カーネマンらがその根本的間違いを指摘しています。

このアメリカの学費高騰が、医療関係者の人件費高騰を招いています。
この医療費高騰が、個人消費、GDP、物価を押し上げていますが、学費高騰や賃料暴騰と同じで国民の生活水準を低下させています。功利主義的にいえば、米国民全体の効用の総量は低下しています。

アメリカの個人消費は、最近では医療費などのサービス消費だけでなく、個人消費に占める割合は10%程度とそれほど大きくないものの、自動車などの耐久財消費によっても支えられています。
自動車売上の増加は、サブプライム層のローンによる購入が大きいようです。
前からサブプライムオートローンの危険性は指摘されていましたが、ここにきてその危険度は上がってきているようです。
第4Qになった米10月の小売売上は、自動車の売り上げが予想外に落ち込んだために、市場予想の0.3%増を下まわり、0.1%増でした。
このため、米10月消費支出も、予想の0.3%増を下まわり、0.1%増でした。
これを受けて米アトランタ地区連銀の「GDPナウ」による米国第4四半期の経済予測は、2.3%増から1.8%増に低下、ゴールドマンも2.3%から2.0%に引き下げています。
FRBは、12月利上げにアクセルを踏んでいますが、すでにアメリカの景気循環による一時的な景気上昇はピークアウトしてきた感があります。
失業保険受給申請の4週平均も、ここにきてジワリと上昇してきています。
また、貯蓄率が上昇しています。
10月の個人消費が小幅増にとどまる反面、貯蓄率は3年ぶりの高水準まで上昇しています。
これは、将来の景気不安によって消費者の消費マインドが低下して、支出が抑えられていることを意味します。
貯蓄する余裕はないものの消費性向の高い中産階級や貧困層は、ローンをしてまで高額のSUVなどのでかいアメ車(ヒスパニックや黒人に受けがいい)を買っていますが、逆に消費性向の低い富裕層が、ここにきて守りにはいってきたようです。
貯蓄率が趨勢的に上昇しているのは格差拡大によって、全体の消費が低迷する過小消費理論に沿った流れだといえます。
民主主義と過少消費理論

貯蓄率上昇が潜在的な消費増の要因になるというブル右翼的な確証バイアスチックで歪んだポジティブな意見もありますが、貯蓄率の上昇が、格差拡大に伴う構造的なものであるのなら、たとえ短期的な景気の循環が上向いたとしても、結局、過小消費理論によって、中長期的なスパンで総消費を趨勢的に低下していくことなります。

アメリカの家計の借金は増加傾向にあります。ミンスキーモーメント到来によるバランスシート調整で今後アメリカの個人消費は急降下する可能性があります。
庶民の生活を圧迫してきた不動産賃貸や教育、医療などのサービス部門のバブルもいつまでも続きません。中国などの新興国から輸入する財や資源国から輸入する資源は、今後、新興国の成長やドル安によって価格が上昇してきますが、サービス部門の価格下落がそれを上回るので米国ではデフレ圧力のほうが高いでしょう。
今現在、コアインフレ率を嵩上げしている、スマホや4Kテレビはすぐ値崩れするでしょう。人間が認識できる画質には、限度があるのでテレビは8Kで打ち止めです。
もちろん、そのまま真綿で首を絞めるようにデフレが進み、アメリカの財政の持続性に赤信号が点灯して、ドルが暴落すればハイパーインフレになる可能性もありますが、それはまだ、何年か先になると思います。ただ、市場や学者が予想するよりはドルやアメリカの覇権の終わりははるかに早いと思います。
FRBが来年、0.25%程度の利上げをなんどするかが今、争点になりつつあります。一回という予想もありますが、3回程度という予想が大きいようです。それでもたった0.75%です。少数派ですが、再度利下げを余儀なくされるとする予想やQE4予測もあります。追加利上げはできても一回程度の可能性が高いと思います。
FRB(GS)はこの一枚の最後のカードをアナウンスメントでちらつかせてドル高を誘導しようとするでしょうが、過去の利上げのときと同じように、長期債利回りはたいして上昇せず、ユーロや金、原油などが反発してドルが売られる可能性が高いと思います。「今回は違う」ことにはならないでしょう。
これもすべて、個人消費しだいですが、堅調といわれている米個人消費の内実は以上のように非常に脆いものでいつくずれてもおかしくありません。


にほんブログ村 経済ブログへ
にほんブログ村

社会・経済 ブログランキングへ
[ 2015/11/26 17:14 ] おすすめ | TB(0) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック
この記事のトラックバックURL

リンク
カウンター
相互RSS
検索フォーム
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

ブロとも申請フォーム
QRコード
QR


ロキソニン