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利子率革命、株式資本主義の終焉ーUPDATE


米経済のマクロ指標は、雇用統計、住宅、自動車といった一部統計を除けば壊滅状態でした。
そういう状況でありながら、FRBは利上げを強行しました。
また、リーマン危機後、今も継続中のデレバッジの圧力を受けてドイツ銀行、クレディ・スイス、モルガンスタンレーなど、積極的にリスクテイクしていた銀行の信用が低下しています。
シェールバブル崩壊や無謀な自社株買いなどが原因になって、社債市場のスプレッドも上昇しています。
金融危機再発のおそれから銀行のCDSが上昇しています。
そういうシステミックリスクが上昇しているなかで、日銀は銀行の収益力を低下させるマイナス金利を導入しました。
こういう日米中銀の現実に逆行するような政策決定は、一般には理解しがたいものがあるので多くの批判をあびています。しかし、その真の目的自体はシンプルでぶれていません。ドルの延命です。
ドルを延命させることでNY市場を中心とした先進国株バブルも持続できます。
ドル高で、たとえ、世界同時不況になっても、米国を中心とした資本家の目先の利益が再優先されるからです。中銀は彼らの所有物だから当然でしょう。

もっとも、過去の利上げ後の値動きがそうであったように、米国の利上げはすでに織り込み済みになっています。利上げ開始後は、過去のパターンどおり、ドルは売られ、金は買い戻されています。
さらに、予想どおり2016年になって米マクロ指標は総崩れになってきています。これで、追加利上げが困難になったこと、再度の利下げ、そしてQE4が織り込まれてきました。
この市場のドル安予想へのブレーキをかけるために、FRBの支店であり、ドルの忠実な番犬であるドラギは3月追加緩和の口先介入をしました。しかし、その効果は持続しませんでした。最近、ドラギの市場へのアナウンスメント効果の低下が顕著になってきています。
中銀による官製相場の市場コントロール能力の低下か懸念されるなか、日銀が特攻ともいえるサプライズマイナス金利導入にふみきりました。
しかし、長期的には中銀の信用力とアナウンスメント効果を低下させる「嘘」をついてまでしたこの捨て身の黒田アタックも、ドルを支え、株バブル崩壊を食い止めることができませんでした。
むしろ、銀行の信用リスク不安を煽って、今のデレバレッジ相場を加速させるトリガーになってしまった感じになっています。
初動ではキャピタルゲインを狙って円債買いが殺到しました。それで長期債がマイナス金利に沈みました。しかし、あくまでキャピタルゲイン狙いであり、持続性はありません。
それよりは、下げる余地がある米国債の金利低下のスピードのほうが優りました。こちらは利回り目的ですから、まだまだ金利低下が持続します。これは、ドル建て金には追い風です。
初動の円債金利低下のスピードが落ち、ドル債金利低下のスピードが、それを上回るようになってきたことで円は買い戻されています。
ドル安円高になれば、米株は売られるので日本株も売られます。日本株が売られると、日本株を買っていた外人の円売りヘッジも買い戻されることになります。世界全体がリスクオフになって、円のキャリトレードも巻き戻しです。
ただ、これが落ち着けば、再びキャリトレードが活性化して資本流出が進むでしょう。それも危険なドル債券ではなく、今は売られすぎている新興国の通貨は債券に向かうでしょう。新興国は人口動態からして成長ののびしろがありますし、先進国に比べれば財政は健全です。今が買い場だと思います。
そして、長期的には日銀の信用低下と日本のリスクプレミアムは上昇して、円安に進むと思います。

世界中の金利が低下しているのは、資本主義の当然の帰結です。
水野和夫氏は随分前から資本主義の市場拡大が飽和し、資本の利潤率を低下させるという「利子率革命」を提唱されていますが、世界経済はその予想どおりに進展しています。

確かにピケティの指摘するように2つの大戦で破壊された経済の復興特需からの反動で、利子率低下は、単なる平均への回帰とみることもできます。ただ、ピケティも資本の規模効果による資本収益力の増加がある一方、ある閾値を超えた資本の集約は、不労所得者の死、すなわち資本収益力が低下することを認めています。
人類の長い歴史のなかではわずかな期間ですが、資本主義は本格的に始まった15世紀ごろを起点にすれば、やはり、水野氏が指摘するように資本の利潤率・収益力は低下していると思います。これだけ中銀がじゃぶじゃぶのマネーを供給して金がだぶついているので、需給法則として当然の帰結といえます。
実際、米企業のROI(投資対効果 / 投資収益率 / 投資利益率 / 投下資本利益率)は、ここ40年で80%低下しているそうです。
FEDのゾンビ経済:この40年でROIは80%暴落

本来ならじゃぶじゃぶのマネーは利潤を求めて、成長余地のある新興国や途上国に流れるべきですが、先進国金融資産バブル維持のために、中銀の金融政策によって市場は麻痺して、その流れが阻害されています。
潜在成長率を上回る先進国の成長はこのバブルで維持されていますが、これは長続きしません。いつか破裂します。資産効果による消費や成長への寄与(トリクルダウン)はゼロではないですが限定されます。逆にバブル崩壊による逆資産効果の個人消費や成長へのダメージは絶大です。そのダメージは、その家計にリスク資産を多く持つ、欧州のほうが日本よりも大きいでしょう。そしてその欧州をはるかに上回るダメージを受けるのはもちろん米国です。一番ダメージが小さいのは一般家計が株をほとんどもっていない中国です。

これから、注目すべきなのは、やはり米経済指標でしょう。
ウォール街の資本家は米経済の不調を覆い隠すために、外的要因を喧伝してきますが、市場参加者は冷静になる必要があります。
究極的には、日銀、ECB、ドイツ銀行、中国経済、原油などの問題よりも、FRBの金融政策、すなわち、ドルの動向が市場を左右します。多種多様な金融商品、資産クラスの市場も、結局はドルを売るか買うかに単純化できます。換言すれば、金融商品は結局、ドルか金しかないのです。
そして、そのFRBもこれ以上、マクロ指標を無視して嘘はつけません。これ以上の嘘やごまかしは信用を低下させることになり長期的には逆効果です。ドルを発行するFRBの信用が低下すれば、ドルの信用に傷がつきます。
米経済指標は、ほぼすべての指標が崩れかかっています。
金融マスメディアが大々的に取り上げることはありませんが、弱気派はいろいろな指標を提示しています。

在庫/売上比の拡大は消費の弱さを示し、在庫投資の反動の在庫整理による今後の成長鈍化を示唆しています。
米国経済の問題を一枚の絵で要約すると
在庫/売上比の拡大の他、
コンファレンスボード景気先行指標低下、耐久消費財受注減、設備投資減、ISM景況指数低下、フルタイム労働者減、鉱工業生産減、小売売上減、個人消費減、輸入減、GDP比の企業収益減、
絵解き経済:いつかきた道
イールドカーブのフラット化、ジャンク債スプレッド上昇、企業収益成長の鈍化、労働参加率の低下、フードスタンプ受給者数の増加、G10マクロ経済指標低下などが景気悪化の指標としてあげられています。
もしこれらのチャートを見てリセッションのようだというなら、そしてリセッションの雰囲気がするというなら・・・
他には、コンテナの輸出・輸入量、鉄道輸送量、電力消費量、設備稼働率、ECRI景気先行指数なども弱いです。多くの大手小売業も店舗の閉鎖、大幅なリストラを予定しています。店舗販売からネット販売へのシフトは店頭の小売アルバイトの需要を減らします。これは、小売頼みであった雇用統計の今後の悪化を示唆しています。雇用統計はあくまで遅行指標です。
失業保険申請の四週間平均は上昇傾向にあります。

ここまでであがっていないなかで、注目すべきなのは、貨幣の流通速度の低下だと思います。
米マネタリー・ベースが語るFRBの本気度
How Peak Debt Constrain the Fed from Moving Rates Higher
アーヴィング・フィッシャーが定式化した古典的な貨幣数量説によると、「貨幣量×流通速度=価格×取引量」となります。
米国は貨幣量(マネーストックM2)こそ増加していますが、その流通速度は下落し続けています。
これは、資本家が金を死蔵させてつかわず、取引(個人消費や企業の設備投資)が活発化していないことを示唆していると思います。
取引を媒介するのが貨幣だからです。
流通速度が上がらないのでインフレ率が上昇せず、取引量も増えないので賃金の伸びが限定され、個人消費・経済成長が加速しないのです。
シルビオ・ゲゼルが提唱するスタンプ通貨(自由貨幣)は、貨幣のうち金を除いた紙幣に時間の経過とともにスタンプを押して減価させることで、その価値保存機能を強制的に弱めるものです。
人々は、死蔵すると腐っていく(減価)紙幣を積極的に使うようになり、流通速度があがるというわけです。また、資本の集中による格差拡大を抑止できます。今のマイナス金利も同じ理屈だと思います。なんとか貨幣の流通速度を高めたいのでしょう。

レイ・ダリオがその経済モデルで指摘するように、自由市場経済を構成する要素の最小単位は個々の取引(売買などの契約)です。
人は、自らの労働を他者の労働(労働の成果である財を含む)と交換します。その交換の場が市場です。この分業によって人類は進化してきました。
この交換には労働を表象した貨幣の利用が便利です。
この貨幣は、基本は金などの現金です。
現金ニコニコ払いなら安心です。
手元に現金がない場合、人は、将来の自分から前借りすることができます。これがクレジット(信用取引)です。
人は将来の自分の能力(返済能力を含む)を過大評価する場合があります。このアプリオリな人間の特性によって経済は成長していきます。
売り手は、その場で現金を受け取るかわりに、その人を信用して自らの労務を提供する取引をします。
相手が返せない(デフォルト債務不履行)場合、それは見る目がなかったということで自己責任です。

しかし、このクレジットは信用が低下するとつかえなくなります。そうなるとリバースが来ます。それが今現在の世界経済の状況です。
クレジットが使えないと取引の数は減ります。取引が減れば、所得も減少して経済は鈍化していきます。
その、債務(クレジット)縮小、デレバレッジは時間がかかります。リーマン後の数年間でバランスシート調整が一巡したことになっていますが、小康状態になっただけでしょう。政府が肩代わりした米企業の債務は再び拡大しています。収益の伸びを超えるスピードで自社株買いやM&Aの資金捻出のために借金が増えています。目先のCEOや株主の利益が最優先され、設備投資や研究開発は怠っているので、企業の成長が今後加速する見込みはありません。

退職金や資産バブルによってうわべだけは可処分所得比の債務負担が軽減しているようにみえる家計ですが、その債務残高は、リーマン当時と同水準までふたたび膨張してきました。
Baby Boomers Are Drowning In Loans: Debt Of Average 67-Year-Old Soared 169% In Past 12 Years
もっとも、人口増の影響を除いた1人当たりの家計債務はいまだに減少傾向にあるようで、2008年のミンスキー・モーメント後のデレバレッジが今現在も進行中のようです。平均的な家計は将来不安から借金して消費するのにいまだに慎重のようです。特に若い世代がそうです。
若者は学生ローンが増加していので住宅ローンが組めず、世帯構成がすすんでいません。これが少子化の原因となっています。もちろん、住宅関連の耐久材消費も伸びていません。
積極的に借金しているのは、日本と同じで40代後半から70代前半のバブリーな過剰消費世代です。能力や労働とは不釣り合いな生活水準をいままで謳歌してきました。かれらキリギリス世代が借金の山を世界中にこしらえてきました。かれらの借金が富裕層をぶくぶくに太らしてきました。
彼らはリタイア世代なので労働所得ではなく資産所得に依拠しています。株や不動産バブルが弾ければ終わりです。かれらは不良債権予備軍です。この世代の債務縮小の地獄はこれからです。その債務縮小が個人消費に強力なブレーキをかけます。
アメリカの唯一の希望はミレニアル世代など若い世代が、バーニー・サンダーズを支持するなど、上の世代に比べて現実的で合理的な判断をできているところです。
資本家にテレビなどのマスメディアで右翼脳に洗脳された上の世代と異なり、インターネットの普及が大きいと思います。

アメリカ家計全体の平均値でみれば可処分所得比の債務負担は軽減されているようにもみえますが、中間層以下の没落で潜在的な不良債権予備軍はむしろ拡大していると思います。特に延滞率の酷い学生ローンは危険です。サブプライム住宅ローンの14%程度と規模が小さいものの、サブプライムオートローンもシステミックリスクのトリガーになるには十分の規模といえます。
リーマンのときと異なるのは、もう国が民間を救うだけの余力がないところです。これが中国が、欧州や日本、そして米国と異なるところです。
先進国はいずれ、大幅増税かプチハイパーインフレ(ギャロッピングインフレーション)の二択を選択しなければいけなくなります。前者のケースでは、富裕層の生活水準が、普通の生活水準(それでも十分リッチ)に低下するだけですみますが、後者のケースでは大多数の人の生活水準が下がります。とくにギリギリなところで生活している人にとっては致命的です。
そうなれば社会不安がおき、戦争や内乱が発生しやすくなります。米国内では内戦が発生する可能性が高いと思います。銃社会で、毎日のように銃乱射事件がおこっている米国ですからその可能性は十分です。
金ですが、一時期1200ドルでペッグされていた時間が長かったのでここに大きなしこりがあると思います。
今現在、1200ドルを超えてきましたが、ここを明白に抜けてしばらくキープできれば、一呼吸つけると思います。


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[ 2016/02/11 18:46 ] おすすめ | TB(0) | CM(0)
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