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書籍紹介 現代経済学の直観的方法 長沼 伸一郎【著】


一言で言えば、ポストコロナのパラダイムシフトの指針となりえる一冊といえます。
現代経済学の直観的方法
第1章から第8章は、経済史、政治学、軍事学などを織り込んだマクロ経済の総論です。
著者は経済の専門家ではなく理系の人間です。もっとも、複雑な数理モデルなどは一切使いません。
この本は、多様な比喩とエピソードを駆使することで、オッカムの剃刀のような切れ味で読者の思考経済を助け、マクロ経済の本質の直感的な理解を可能としています。
文体も魅力的で飽きずに読めます。
内容は基礎的なことばかりですが、経済を語る政治家や経済評論家でも、この単純化されたモデルを理解している人は少ないと思います。このモデルの方程式は投資や政治政策などの立案に応用できるものです。
ポストコロナの世界を生き抜きくための必須の教養になると思います。すべての人におすすめできます。

この本のキモは最終章である第9章の資本主義経済の将来はどこへ向かうのかにあります。ここでは一転して新たな視点が提示されます。
重要な理論として、縮退によるコラプサー化、これを食い止めるための碁石理論というものがでてきます。
詳しくは本書を読んでもらいたいのですが、私なりの解釈では以下に述べるようなものだと考えます。
縮退とは、合成の誤謬みたいなのものです。
すなわち、個々人の短期的欲望の総和が、個々人の長期的利益の総和を量質ともに上回るということです。市場原理にまかせて各個人の願望にまかせていれば、集中により中心部が栄えたとしても全体としては量あるいは質が劣化し、功利主義的な最大多数の最大幸福は実現できないというものです。
米一俵の精神、アリとキリギリス、猿蟹合戦、マシュマロ実験などの話がその教訓でもあります。
直近効果というヒューリスティックにより大衆は、近視眼的になり俯瞰的・大局的にものごとを判断することができない。
今の日本なら、大衆が10万円給付に満足し、消費税に反対なのがまさにその例にあたります。これは将来、強烈な逆進性のあるインフレ課税というステルス消費税の増税原因になります。
目先の新コロナによる人的被害を食い止めようとして、長期的全体的な人的被害を拡大している。
政治家は自らの任期といった限定された時間軸での支持率のために、増税を避け、株価を吊り上げて景気をよくみせようとします。他国を挑発して愛国心を煽ります。
長期的な国益や国民、住民の利益を優先して考えようとはしません。
企業のCEOも目先の株価を釣り上げるためタコ足配当や自社株買いをすることで株主利益の最大化を図って、自らの報酬を上げることだけを考えています。設備投資をしたりして企業の長期安定的な成長をはかることは二の次です。
実体経済と乖離した金融資本主義の暴走、格差拡大、環境破壊、米国・ユダヤ流の進歩的リベラル価値観の他者への強要、日本の自民党の1党独裁などもすべてこの縮退が原因です。
野党は自らのアイデンティー誇示だけに執着し政権交代を本気で考えていない。特定の支持層だけにメッセージを発信し選挙に当選することだけを考えている。乱立による誤った多様化は結果的に一強による画一化を招き、その結果、多様性が犠牲になるジレンマに陥っています。
政体循環論によると必ずしも民主政が、独裁制や寡占制よりよい政体とはいえない。民主政は衆愚政に陥りやすい。なぜなら、民衆の短期的願望が民衆自身の長期的願望を駆逐して不可逆的な状態に陥るからです。
個人は刹那の快楽のために物質、情報(刺激や変化)、怠惰(その象徴が大麻やベーシックインカム)を求める。それを定量化したものがマネーです。その増殖を是とするのが資本主義です。資本主義は、指数関数的な成長なしには自らを維持できない。泳ぎ続けないと死んでしまうマグロのようなものでしょう。
その成長の結果、実体経済ではなく、短期的な利益が得られる金融にマネーが集中していく。
金融政策や財政政策といった目先の経済成長の巡航速度を早めることだけを考えてきた経済学は結局、将来の需要を先取りし短期的な願望だけを優先させている。その結果、縮退を加速させるだけでした。この縮退が一度加速すると新自由主義者がいうようなスマートな神の手の自動回復機構は機能せず不可逆的になります。
その縮退を抑止していた伝統や習慣や共同体は破壊されていく。それが。現代における様々な弊害を引き起こしています。

このように、各人の良かれとおもって下した短期的な判断(カーネマンのいうシステム1)の帰結は、長期的にみれば、個々人の利益、すなわち功利主義的な幸福の総和にならないという結果になった。すなわち、要素還元主義に陥っている。
縮退化による1極集中が多様性を害し、個々人の幸福の総和を量、質ともに低下させていきます。
所得と幸福にはある程度の相関があるが、一定の所得を超えるとその人の幸福感は伸びないというのはいろいろな実証研究から証明されています。マズローの欲求の段階説、ダニエル・カーネマンの幸福理論である経験 VS.記憶といった幸福の二面性もこれを説明しているといえます。
この縮退による幸福度の低下が、容易に回復せず不可逆的な状態に陥いる。
その現代の閉塞感がコラプサー化です。
それと抜け出すには、歴史的にみれば、ショック・ドクトリン、外圧、創造的破壊みたいなものが必要ですが、現代は、それでも不十分になってきています。そのため、パラダイムシフトが必要になっています。
縮退から抜け出すパラダイムシフトの理論のとして提案されているのが、可能性による幸福と碁石理論です。
可能性による幸福は一種のフロー理論のようなものだと思います。
碁石理論は、現代の欧米で最大価値とされている個人主義ではなく、全体主義・共同体主義に親和性がある理論です。すなわち、人とのつながりが幸福感増強への鍵になるという理論です。
そのための右派的アプローチが、愛国心、郷土愛、歴史や神話などのナラティブ、宗教、伝統社会への懐古といったものです。
一方、左派的なアプローチが、ヒューマニズム、いい意味でのグローバリズム、ユニバーサル、平和主義、格差是正、食料問題、環境問題、里山資本主義、動物愛護、SDGsといったものでしょうか。
しかし、現代の縮退の最大圧力、すなわちグローバルに膨張する金融資本主義という巨大な力に対抗するにはそれらでは不十分だと著者は指摘しています。
そのブレークスルーのために、誰もが理屈(科学や数学)で納得でき、時代の流れに参加している感覚を得られるような大きな物語を今の時代を代表する知性のある人の頭脳を結集して、提示する必要があるとしています。
時代はニーチェがいうようなカリスマ的なアイドル、超人を求めているのだと思います。



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[ 2020/04/27 14:48 ] おすすめ | TB(0) | CM(0)
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