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今週の相場雑感


雇用統計と消費者物価指数通過後、9月のテーパリング発表は消えたというのが市場コンセンサスになりました。
しかし、ここにきて、早期テーパリング派が巻き返しています。
彼らはこれまで債券ショート、ドルロングで結構負けてきました。
なんとか、ここで挽回したのでしょう。
そのきっかけになったのが、小売売上でした。
結果は市場予想を大きく上回るものでした。
しかし、最近の小売売上げの市場予想(エコノミストのコンセンサス)は外れてばかりでした。
市場予想を大きく下回る結果が続いていました。
一方、バンカメのチームのクレジットカード調査の成績は良好でした。
そのバンカメが8月は前月比で回復すると予想していました。
結果は、そのとおりになったのでが、前月7分は下方修正されました。
バンカメよりも弱い予想をしていたJPモルガンの予想が近かった。
それでも中国の恒大を起因とした流動性リスクを嫌気したドルのレパトリや、ECBのテーパリング開始によるドル高が金市場を直撃した。
金融引き締めでFRBに先行するECBの政策は通常ならドル安になるはずがそうはならなかった。
独国債と米国債が最近では高い相関があるので、独国債の金利上昇が米国債の金利を上昇させ、それがドル高になったのだと思う。
もちろん、中国の金融市場が不安定になり、ドルの巻き返しがあったのもある。
一方、同時に発表された新規の失業保険申請数は、前月より増加した。これはテーパリング観測を後退させる材料。
デルタやハリケーンの影響で、なんらかの政府支援を受けている米国人の数は再び1200万人以上に戻った。
ただ、9月になって失業保険の上乗せ措置が民主党州を含めてすべて終了したため、失業保険継続数は減少した。
しかし、コロナ前よりも高い水準であり、雇用の回復は鈍い。
9月になれば、失業保険の上乗せも終了し、学校も始まって主婦も労働市場に戻ってくるという楽観論は微妙な結果となった。
それでも、市場はそれを無視して小売売上が市場予想を大きく上回ったことに強く反応した。
同じく同時に発表されたフィリー指数がよかったこともあるのだろう。
2勝1敗の指標発表の後、市場に参加している群衆は、単純なためか、景気は回復している9月のテーパリング、ワンチャンあるかもと刷り込まれたようです。
確かにデルタ株が猛威をふるい始めた8月に小売が強かったのはインパクトが強かった。
また、半導体不足が原因か自動車や電気製品の売上がふるわないなか、これだけの数字を残せたというのは今後、供給が戻れば消費はさらに強くなるとみることもできる。
その一方で悪い見方もできる。
人は死など恐怖をストレスを感じたときに、浪費する傾向があるという心理学の研究がある。
コロナで外出できず、家にこもっているとついついネットで買い物をしてしまいがちになるのかもしれない。
家にいることが多いから、家具やDIYのリフォームにお金をかけることもある。
食品価格も上昇している。
米国人は貯金がない。一時金や失業保険申請の上乗せがなくなる最後の買い物だったのかもしれない。
失業手当の削減により、米国全体の年収は1443億ドル減少し、年間個人消費は792億ドル減少すると推計されています。
実際、8月は耐久財などの小売り売上は堅調だったものの、それ以外のサービス支出などは低調で個人消費は弱かったようです。
JPモルガンによると、8月はデルタ株の影響を受け、小売売上高に含まれない、消費者の支出の3/2を占める、サービス消費支出が様々なデータから鈍化しているそうです。
そのため、JPモルガンは、Q3 GDPの見通しを7%から5%に引き下げています。
すでに多くの金融機関がQ3の下方修正をしています。
9月に入り、デルタ株はいよいよ猛威をふるっています。
失業保険の上乗せも全州でなくなった。
8月の小売売上がよかっただけで米景気回復は強いと考えるのは早計。
雇用回復なき個人消費↑は持続できない。
米国ではすでにコロナで8人に1人が感染し、500人に1人が死んでいる。
ゴールドマン・サックスを始めとして、最近では、市場はデルタやテーパリングや中国の規制の影響を過大評価しているという言説が目立ってきた(インフレは触れていないのがミソだが)。しかし、デルタの影響は軽微でないだろう。
確かに、日本や中国などは被害が米国に比べると圧倒的に軽微なのに対して、やりすぎな自粛やロックダウンで短期的には大きな景気鈍化を招いている。しかし、長期的な影響は少なくなる。
米国は、目先の景気回復を重視して、多数の労働者や消費者を失った。これは長期的には経済にマイナス。
ブレインフォグ(脳に霧)というコロナ後遺症も問題となっている。
コロナの影響で、脳に炎症が起こり、アルツハイマー病に似た変化を脳細胞にもたらしている可能性があるそうで、様々な認知障害を起こすらしい。
ただでさえ、一般的に、教育水準や労働意欲が低く、薬物依存や肥満が多い米国の労働者の生産性はさらに低下すると懸念される。
中国の広州恒大の問題は、流動性危機。
現状、米国と異なり、金融政策をフルスロットルで踏んでいない中国なら解決はできる。
中国崩壊が悲願のネトウヨの希望も虚しく、リーマンショックのようなことになる可能性は低い。
ただし、株主や社債を買っている投資家は救われないだろう。中国は米国以上に市場原理主義で自己責任論が強いときがある・。
中国では、米国や日本と異なり、資本家は救われない。
ブラックロックなどは損失を受けるかもしれない。
バブル企業にありがちなように恒大は手を広げすぎた。
スポンサーのサッカーチームなどは金満チームでブラジル代表などを引っこ抜いていた。
中国共産党は他への飛び火を回避するため、流動性リスクに対応するため、マネーは供給するが、傲慢な経営者や無駄な事業などは救わない。従業員保護のため事業は存続させる。国内の銀行や保険会社は救われる。幸運で成功したCEOがヒーロー扱いされる米国とは国民性が違う。そのあたりは、儒教国家で社会主義の国。

金市場が非常に弱い地合いを狙ったのか、ブラックロックのラス・ケステリッチが、世界経済の回復に伴い実質金利が正常化するとの期待から金のポジションをほぼ解消したとインタビューで発言したのも、普段なら些細なニュースだが金に市場の売りを煽った。
そもそも、ブラックロックは以前から金に対しては売り目線であり、いまさらという感じもしないが。
実質金利が正常化が何を意味するのかもわからない。
名目金利=実質金利+インフレ率+リスクみたいな、机上の教科書的な数字が正常なのだろうか?
現実は違う。先進国のどこもそのような図式のところはない。リアルであるのは先進国のなかで米国の長期金利は相対的にまだまだ高すぎるということだけ。過剰流動性の金余りは米国だけでなく世界共通。最近では再び、外国勢が利潤を求めて米国債を積極的に買っている。
仮に実質金利の正常化が、マイナスからプラスになるということなら、長期金利は大幅に上昇することにになる。かれがポートフォリオマネージャーを務める「ブラックロック・グローバル・アロケーション・ファンド」もただでは済まないと思う。
マイクロソフトやアップル、グーグルなどのが組入銘柄の上位を占めているのだから。もちろん、今話題の恒大も。
最近はこのファンドの成績も低調。金利上昇の影響か、今日もマイクロソフトなどは大きく売られている。
彼はさらに金は株安のヘッジにならないというが、それでは何がヘッジになるだろうか。
米国債? 最近では米国債と米国株は高い正の相関があるので、債券はヘッジにならない。
金と株は今は、やや逆相関だが、ほとんど相関がない。相関が弱いだけでも、十分、分散のヘッジにはなると思う。
また、彼は短期的という保険をかけながら、短期的には金はインフレ・ヘッジにならないという。
そのため、価格決定力のある企業の個別株のほうがインフレ・ヘッジとしておすすめらしい。
パッシブ投資全盛の今、インフレ亢進で、指数が崩れて個別株が持ちこたえるとも思えない。
確かに金が目先の物価上昇に対してはあまりヘッジにならないのは事実です。金が反応するのは目先の物価よりもインフレ予測。将来のインフレに備えて、貯蓄機能が期待されるから。
消費者物価などボラが大きな数字と異なり、インフレ期待は少しずつしか上昇しない。
今、消費者物価指数が急上昇しているのに金価格が上昇していないから、金はインフレヘッジにならないというのは誤解があると思う。
市場のインフレ期待はまだ確かに消費者物価指数などに比べて低い水準だが、少しずつ上っていくと予想される。
実際、NY連銀の消費者調査や、ミシガンの調査でその傾向ははっきりしている。
そうなればTIPSはさらに買われ、実質金利は下がる。

結局、いくらインフレが亢進しようが、一時的に小売売上が強かろうが、雇用が回復しなければFRBは金融引き締めに舵を切れない。テーパリングを強引に開始しても10%でも株が下がれば、なんだかんだ言い訳してQEを続ける。インフレ以上に怖いのは株価暴落と長期金利急騰。そうなれば米国は破綻する。米国の選択肢はインフレを許容するしかない。

あと残念なニュース
自民総裁選、エコノミストの75%、投資家の6割超が河野氏の勝利を予想しているとのこと。
もちろん、結果は最後までわからないが、フィリップ・E・ テトロックが指摘するように専門家の予測がいかに当たらないか、素人以下ということの証拠がまた増えると思う。
日本のエコノミストや投資家などの市場関係者は、欧米かぶれの新自由主義思想の右回りの人が多い。
著名な人だけでなく、無名だがツイッター番長の米株クラスタなどにも多い。
かれらは希望と予測を混同していると思う。基準値という軸よりも自分の嗜好と、経験と直感(ヒューリスティック)に頼りすぎ。将来を予測するのが仕事のエコノミストや投資家ほどイデオロギー的なバイアスが強いのは問題。
個人的にはあれは出来レースだと思う。
総裁選は、マスコミが取り上げてくれるから単純接触効果を期待し売名する候補者が後を絶たない。
それで、ただの目立ちたがりの泡沫候補の変人扱いから、高感度が上がり、最終的に小泉や麻生のように総理大臣になれたものもいるが。
今回は女性二人はそうだろう。ここで名前を売り、次こそ初の女性総理という名誉がほしいのだろう。
しかし、河野は谷垣に対抗したときは売名だが、今回は勘違いして勝てるとふんだと思う。
どっちにしろ、河野、高市、野田の三人はリーダーの器ではない。
政治とは数であり、この三人は、それを集める力もない。選挙には勝てても政治抗争には勝てないタイプの政治家。地方自治体の首長向き。
今回の総裁選は、原発はともかく、女系天皇とか、夫婦別姓とか、もりかけ再調査とか相対的に重要度の低いものが争点になっている。総理大臣を決めるもっと重要な争点に触れず、対立軸がみえにくい茶番だが、あえて単純化すれば、岸田(経済左派)、河野(経済右派)、高市(社会・文化右派)の対立だろう。野田は高市との差別化で(社会・文化左派)派に変節したことを全面アピールしているが、もとは高市と同じ穴の狢。
議員票は、派閥のしばりが緩んで割れている。岸田が強いが、高市も意外と善戦している。
その一方で、河野が苦戦している。そのため、議員票を犠牲にしてでも、党員票欲しさに石破の支援を仰いだ。
この賭けは悪手だったと思う。決戦投票での勝利の可能性が完全に消滅しただけでなく、惨敗になれば次回も厳しくなった。
いうほど河野太郎は党員票でアドバンテージはないと思われる。
河野太郎は神奈川や大阪など都市部では強い。
岸田は地方で強い。宏池会の伝統か、原子力にアレルギーのある東北、広島や静岡、北陸で強い。
党員票はいうほど世論に近いわけでもない。高齢者が多いし、自分の支持する議員や権益団体の影響を受ける。
郵便票、農業票、経団連票など今回は党員票も議員票と同じく割れるだろう。
河野が一度目で過半数をとる可能性は極めて低い。そのためには7割弱程度、党員票をとらないといけない。
一発で決める可能性があるとすれば岸田ぐらい。
それでも決戦投票は多くの人が予想するとおり、河野と岸田だろう。
決選投票になれば、議員票を固めている岸田が強い。二階派を除けば、ほぼ全派閥、無所属からも支持を得ている。
党内右派、左派、主流派、非主流派、どちらからも支持を得ている。かつての敵も味方にしている。他の候補は自分のアイデンティのために敵を作りすぎた。
国民世論では人気のない岸田だが、決戦投票となれば、世論の流れも変わる。勝ち馬にのろうとする大衆、同じく変節する議員がでてきて岸田がなし崩し的に勝利する。結局、新人議員もベテラン議員も選挙に勝ちたいし、ポストがほしい。自分の意地を通せば金策も困る。

話は戻るが金市場は、結局、来週のFOMC待ち。
今はボラが大きいが、出来高も小さい。
買い手もあらわれないが、積極的に売りを仕掛けてくる投機家も少ない。
結局、FOMC待ちで一時的に、機関投資家などが、キャッシュに待避しているのだと思う。
一方、株はそうでもないような気配がしてきましたが。
過剰流動性とはいっても一般の投資家のキャッシュ比率は低い。株や仮想通貨のバブルは金融緩和による低金利を利用したレバレッジでパンパンに膨らませされたもの。
QEの恩恵をあまり受けてこれなかった金と異なり、その恩恵を最大限受けてきた株や仮想通貨のダメージは大きいと思う。


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[ 2021/09/18 03:54 ] 雑感 | TB(0) | CM(0)
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