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本当にテーパリングは米長期債利回りを上昇させるのか?


先日のFOMCはタカ派色強しと市場で受け止められました。
これを受けて、長期金利が急上昇。
いわゆるベア・スティープニングが出現しました。
イールドカーブの傾きが広がるのがスティープニングです。
短期金利の上昇よりも長期金利の上昇が上回り、金利差が拡大していく状態がベア・スティープニングです。
ベア・スティープニングは将来的な景気拡大や金融引き締めが織り込まれる状況下で出現しやすいとされています。
株やコモディティは、ベア・スティープニングのときもっともパフォーマンスがいいとされています。
一方、金のパフォーマンスが一番悪いのが、ベア・スティープニングの時。
現実に利上げが始まり、短期金利の上昇が長期金利の上昇を上回るベア・フラットニングに移行した状態になると、金のパフォーマンスはそれほど悪くなくなります。横ばい状態になるというが過去のパターンです。

今回のFOMCでこれから本当にベア・スティープニングに移行するのかが争点になります。
その検討のために前回のテーパリングのおさらいをしておく必要があります。
2013年5月、バーナンキは、議会証言後の質疑応答で、景気指標の改善が続けば債券購入のペースを減速させる可能性があると発言しました。
これは市場にはサプライズで、米長期債は暴落し、10年債利回りは2%台まで急上昇しました。
金や株も暴落。
いわゆる、テーパー・タントラムです。
6月のFOMCでも同様の趣旨の発言を繰り返しました。米10年債利回りは2.5%まで上昇しました。
市場が荒れたため、バーナンキは8月のジャクソンホールは欠席。
9月のFOMCを前に市場の恐怖は高まり、10年債利回りは一時3%台まで上昇しました。
結局、9月のテーパリングは見送ったことで利回りは再び低下を開始。
12月にテーパリング開始を決定。利回りは一時2.9%まで再び上昇しましたが、9月の3%を超えることはありませんでした。
その後、テーパリングは続きましたが、長期債利回りは低下を続け、2014年10月にテーパリングを終了したときには2.3%まで利回りは低下しました。
その後、1年すこしたった2015年12月、10年ぶりに利上げを決定。利上げ決定時の利回りは2.3%とテーパリング終了時と変わらず。
利上げ後、長期債利回りは再び低下を続けましたが、トランプ大統領誕生の影響で、米中関係の悪化が嫌気されて、一時的に利回りは上昇。
しかし、2019年7月に再び利下げ転換したことで、長期債券利回りは下落トレンドに回帰。
現在まで下げトレンドが続いています。直近の利回りは1.45%。
実際、FRBが市場の長期債利回りに影響を与えたのはテーパタントラムから3ヶ月ちょっとの期間だけでした。
その前の利上げ期も同じでした。
2004年6月の利上げ開始以降、長期金利は低下しました。6回計1.50%の利上げにもかかわらず、長期金利が低下したことに対して、グリーンスパンFRB議長は「コナンドラム(謎)だ」と述べました。その後も11回計2.75%の利上げが行われたましたが、長期金利はほとんど上昇しませんでした。中国や日本の過剰貯蓄による過剰流動性と米国の貿易赤字がその原因です。過剰流動性は当時より今のほうがはるかに巨大です。
このような歴史をみれば、今の市場の反応は過剰反応のように思えます。

今回、発表されたFOMCメンバーの政策金利見通しの分布(ドットチャート)で、18人の政策担当者のうち9人が2022年に利上げが必要になると表明したこともあり、2022年利上げが市場のコンセンサスになりました。
もっとも、ドットチャートの予測精度は低いです。利上げ初期段階の見通しは利上げ間近でないと精度が高まらないといわれています。
タカ派のメンバーの何人かは再任されない可能性が濃厚です。
なお、このような市場のコンセンサスに反し、今回のFOMCを受けたゴールドマン・サックスやJPモルガンの見通しは、2022年の利上げはないという見立てです。
FRBはテーパリングには前のめりですが、利上げにはまだまだ慎重のようです。
長期金利が上昇して、ベア・スティープニングになるのは株にプラスだから容認するが、短期金利が上昇するベア・フラットニングは望んでいないとも思えます。もうひとつのバブルである不動産市場に影響がではじめます。
しかし、今回に関しては、ベア・スティープニングが必ずしも、株にとってプラスになるとは限らないと思います。
コロナバブルによって発生した過剰流動性は世界中の債券の利回りを押しつぶしています。
ジャンク債市場の名目利回りは約3.8%は低下しています。
ジャンク債と米国債の利回りのスプレッドがここまで縮小したのはリーマンショックの前以来です。
ジャンク債市場の平均デュレーション(満期日)は6年です。
米中長期債の利回りが上昇すれば、ジャンク債市場は崩壊します。
今の株バブルを牽引してきたは自社株買いです。自社株買いの資金はもっぱら社債市場で調達されています。
また、最近ではロビンフッダーと呼ばれる個人投資家の動向も見逃せません。
彼らの軍資金は少ないため、過剰なレバレッジをかけて売買を行っています。
また、ブローカーとディーラーのマージン(証拠金)口座の残高も史上最高に膨らんでいます。
すべての人が楽観し、過剰なレバレッジをかけてリスク市場に参加しています。
レバレッジは借金して投機することですから、利子が上昇すれば、逆回転することになります。
テーパリングした結果、長期債利回りが上昇して、リスク資産市場が崩壊することはFRBの望むところではありません。
それでもテーパリングに前のめりなのは、FRBには長期債利回りが上昇しないという自信があるためだと思います。
その要因の一つとして、あげられるのは、来年とその後数年、米国債の発行額が減るだろうという予測です。
トランプ減税と新型コロナウイルスのコロナ対策の財政出動の急増により、国債発行額は長期にわたり増え続けてききました。しかも、議会は現在、インフラと社会保障への新たな歳出を巡り協議を続けています。もっとも、新たな歳入に関する措置(法人増税、キャピタルゲイン課税など累進課税の強化)も計画されており、借り入れニーズは低下する見通しだそうです。
バンカメのストラテジストによると、政府の資金調達ニーズは2021年から22年にかけて急激に低下する見通しだそうです。
これまで大きく膨らんできた中長期債入札の規模は、11月の四半期入札では約5年ぶりに縮小すると予想されています。
縮小の規模は非常に大きく、テーパリングの影響を相殺して余りあるものになる可能性が高いというのが、多くの債券ディーラーの見方だそうです。テーパリングによる需要減より発行額減少の供給減のほうが大きいということです。
市場コンセンサスでは11月にテーパリングが開始されると予想されています(個人的には早くても12月だと思いますが)。
短期債の利回りゼロにがつぶされている今、リバースレポ頼みで運用難に苦しむ銀行や年金基金は長期債利回りのこれ以上の急低下は避けたい。
FRBはこれを避けるために、年末に、テーパリングを開始するのだと思います。
個人的には、結局、米国の税収は増えず、米国の国債の発行は今後も増え続けると思います。
しかし、それを上回る過剰マネーが米国内だけでなく世界中ですでに発生しています。これからも信用創造で増え続けると思います。
相対的に利回りの高い米長期債は、利潤を求めた過剰マネーに押しつぶされていくと思います。
金価格は、これから2.3ヶ月は厳しいかもしれません。
高橋ダンのような思慮の浅い市場関係者などで売り煽る人も増えてくることでしょう。
しかし、以上のよう長期金利の急騰の可能性は低く「利子率革命」による長期金利の長期下げトレンドは今後も続きます。中長期に金の上昇トレンドも崩れないと思います。
超長期的には米国の金利の影響は薄れていき、インフレや現物の実需、そしてドルの信用低下が金価格の決定要因になっていくと思います。
2013年のテーパー・タントラムから2015年の利上げまでの2年半、金相場は厳しい状況が続きました。
長期金利が下落にしているのにもかかわらず、金の下落トレンドが続きました。金が再び上昇トレンドに転換したのは2015年の利上げ決定のときです。そのタイミングが長期的な金の最高の買い場でした。
テーパー・タントラム以降、金価格と米長期債の利回りが正相関になったのは金価格が低迷したテーパリング開始から利上げまでの2年間だけです。短期的な相関は維持していましたが、流動性に劣る金市場の投資家のほうが債券市場投資家よりもナーバスになっためか、2年の期間では相関が逆になった。当時は今と違い、市場は金に対して総悲観だった。
もっとも、2015年の利上げ以降は、逆相関に回帰し、それは今も続いています。
今後数ヶ月長期金利が上昇し、金価格が下落すれば、そのときが長期的な買い場になると思います。


[ 2021/09/26 02:59 ] おすすめ | TB(0) | CM(0)
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