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サウジとアメリカの蜜月が終わる日


サウジアラビアは、サウード家のアラビア国を意味します。極小数の王族が原油を支配しています。
数が少ないため、政敵や民衆の民主化運動に無力です。また、国土が広くてその分原油が多いのですが、人口が少なく他国からの侵略に対抗できる陸軍力がありません。
この王族の既得権益を内乱や周辺国から守ることと引き換えに特権を手に入れたのがアメリカです。アメリカの支配者であるユダヤ人やプロテスタントはイスラム教徒が大嫌いですが、ギブアンドテイクです。サウジもアラブ諸国を裏切ることになりますが大義よりも自己保身を選びました。

金との兌換を中止したニクソン・ショック後、実物資産の裏付けのないドルの購買力は減価し続けました。
その減価のスピードを緩和するために、アメリカは、サウジに接近することで原油取引の国際決済通貨をドルが独占するに成功しました。いわゆるドルのペトロダラー化です。
しかし、原油の価格をドルで表示することはドルの価値が減価すると原油価格がダイレクトに上昇することにもなります。原油によって裏付けされていたドルですが、ユーロ発足後は、むしろ原油高になると負の相関でドル安になる傾向が強くなってきています。原油供給不安の地政学リスクでは有事のドルではなくなりむしろドルは売られるようになりました。
原油価格の上昇は、国土が広く自動車に依存するライフスタイルのアメリカ経済を直撃します。ガソリン代の高騰は、家計を圧迫して、それ以外の物やサービスの消費を減らします。個人消費の低下はGDP成長率を減少させます。
アメリカは、ドル防衛と経済成長のためにどうしても原油価格を抑える必要があります、

オイルショック以前、原油価格は、欧米のセブン・シスターズがその決定権を握っていました。
安い価格で原油はいくらでも使いたい放題でした。アメリカでは巨大なボディのアメ車が全盛でした。
資源ナショナリズムでその価格決定権を欧米から産油国自身に奪い返したのがOPECです。OPEC誕生によるオイルショックにより原油価格は上昇しました。
これに対して、アメリカは奪われた原油価格の決定権を取り戻すために空売りを仕掛けることができる先物市場開設しました。金との兌換を禁止したニクソン・ショックのあとに金価格を抑えるために金先物市場を開設したのと同じです。もっとも先物市場で価格を抑えることができるのは短期的な間だけです。先物は反対売買が予定されていることと裁定があるために、結局は現物市場における現物の需給が価格を決定することになります。
そこで、アメリカはサウジとの関係を強化することで原油価格の上昇を抑えることにしました。
地政学リスクによって原油の供給が減少し原油価格が高騰しそうになったときに、これを抑えたのがサウジの増産です。ウィキリークスによるとサウジの増産能力には限界があることが暴露されています。また、無理な増産は油田の寿命を縮めることになるそうです。しかし、サウジは今までは主にアメリカのために原油の増産を引き受けてきました。

このように、アメリカはアブラムシ(サウジの王族)を天敵から守るアリでした。アブラムシの甘い排泄物(原油)はアリの大好物なのです。アリはその見返りにアブラムシの天敵であるてんとう虫(サウジ国内の民主化運動、隣接するシーア派のアラブ諸国)などからアリを守ってきました。
このアメリカとサウジの共生関係の蜜月時代が終わりを迎えようとしています。

財政破綻に瀕しているアメリカが軍事作戦が困難になっています。
そのため、中東ではシリアやイランとの和解の道を模索するようになっています。
これに対して、シリア、イランと対立するサウジが反発しています。
サウジアラビアは、抗議の意思表示として国連安全保障理事会の非常任理事国への就任を拒否しました。
サウジの情報機関トップであるバンダル王子は、米国との関係を大幅に見直すと欧州の外交官に伝えたと報じられています。
サウジは同じイスラム国家でアメリカと蜜月関係にあったエジプトのムバラク大統領があっさりアメリカに切られた頃からアメリカへの不振を高めていたようです。さらに最近のアメリカのシリアやイランとの和解はサウジにとって裏切りにしかうつりません。
サウジアラビアのためにパキスタンで製造された核兵器がいつでも引き渡せる状態にあるとNATOの高官が発言したことが報道がなされています。核兵器があれば人口の少ない国でも少数の陸軍で国を守ることができます。イスラエルがそうです。アメリカに頼らず自己防衛が可能になります。
サウジは力の衰えたアメリカの代わりにEUや中国に急接近しています。
既にサウジの原油の輸出先1位ははアメリカから中国に変わっています。
イスラエルがとらえた衛生写真から、サウジアラビアの砂漠につくられた、これまで知られていなかったミサイル発射基地には中国製の地対地ミサイルが装備されているという情報もあります。
原油輸出で一二を争うロシアとは、サウジの減産による原油価格下落でロシア経済が打撃を受けていたことや、ロシア国内のチェチェンのテロをサウジが支援してきたこと、サウジの敵であるシリアやイランをロシアが支援してきたことなどで関係は険悪でしたが、ここにきてロシア製の武器の購入を提案するなど一定の歩み寄りが見られています。

今現在、イランで六カ国協議が行われていますが、ここでもし、イランの原油禁輸制裁の解除がなされるなどイランへの経済制裁が緩められると、原油の需給が緩むため原油価格は下がるというむきが多いようです。アメリカのイランへの急接近の目的としては、財政事情による軍事的負担の軽減、シリア問題で失った中東外交のイニシアティブの回復、オバマの名誉挽回などの他に、原油価格の抑止があげられると思います。
もっとも、これによって、サウジのアメリカ離れが加速して、今後の減産を拒否するようになれば、今度、イラク、リビア、ナイジェリア等の地政学的リスクで需給がひっぱくした場合、価格の上昇を抑えられなくなります。
実際、サウジは原油価格維持のために10月には大幅に減産しています。
サウジアラビア産油量、10月に大幅減少=関係筋

OPECはシェールオイルを過大評価していると思います。シェールオイルは二年で急に減退するので増産は5年も続きません。今までの設備投資の元がとれないうちに新しい穴を掘る必要があるため採算コストが上がり続けます。中国インドの需要増で国際原油価格は右肩上がりに上昇しつづけますが、その上昇スピードよりもシェールのコストの上昇のほうが早いと思われます。
アメリカは、盗聴問題でカナダやブラジル、ベネズエラなどのアメリカ大陸の産油国との関係が悪化しています。サウジとの関係がこじれたあと、割高な国内のシェールだけに頼ることはアメリカ経済を弱体化します。そもそもシェールが楽観的な期待どおりの増産ができたとしてもアメリカ国内の半分の需要しかみたすことはできません。今の生活水準を維持するなら残り半分は海外から輸入する必要があります。

サウジがアメリカを裏切るとアメリカは原油価格のコントロール力を失うだけではありません。
サウジが、原油の決済に人民元やユーロ、そして金を認めるとペトロダラーとしてのドルは暴落します。
岩本沙弓氏は、過去、決済通貨としてのドルを否認する動きや要人の発言があったときに大きくドルが下落した事実を指摘しています。サウジの裏切りは過去最大のショックをドルに与えることになるでしょう。
イラクは石油取引をドル決済から他の通貨に換えようとしたことでアメリカに大量破壊兵器をでっちあげられ国土を焼かれて何百万人もの無辜の国民が殺されました。
しかし、サウジに侵攻する大義も財政余力も今のアメリカにはありません。


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[ 2013/11/09 22:29 ] おすすめ | TB(0) | CM(4)
ドル価値の減価は、米国民の窮乏化に繋がるからFEMAなどで予防線を張っているんでしょうね。

ある意味、サウジアラビアの責任にして米国債踏み倒しシナリオもあり得るんではないでしょうか?
微妙な国益バランスの均衡点においてトリガーが引かれるような気がします。
[ 2013/11/10 01:19 ] [ 編集 ]
アメリカは少しずつドルの減価によるインフレで米国債を踏み倒したいんでしょうが、今のようにデフレが続くと利払い負担でハードランディングのデフォルトになる懸念がありますね。
トリガーはアメリカ自身はもっていないです。
多くの識者が指摘するようにそのトリガーは中国が握っています。
三中会で今後のアメリカの運命が決まるように思えます。
[ 2013/11/10 11:55 ] [ 編集 ]
ドルや石油をめぐりここ何十年か何が起きて(起こされて)きたのかよくわからないできたのが、はっきり見えてきました。いつもありがとうございます!
[ 2013/11/11 23:07 ] [ 編集 ]
katsukoのブログ さんこんばんわ。
こちらのほうこそいつもコメントありがとうございます。
[ 2013/11/12 20:59 ] [ 編集 ]
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