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イエレンの高貴な嘘


米ジャクソンホールでのイエレンFRB議長の講演は、タカ派寄りでもなく、ハト派的寄りもなく中立的だったというのがコンセンサスのようです。
タカ派のエコノミストやメディアは確証バイアスで、今回の講演はタカ派的だったとしていますが、文言解釈からするとそれはありません。
一方、マーケットは事前にハト派寄りのコメントをするという予想が大きかった分、少し失望感があったようです。
しかし、私の個人的な解釈だと、今回の講演による言質で、予想より早い利上げの可能性はこれでほぼ消えたと思います。

イエレンは、今回の講演で、市場が注目する利上げ時期について、労働市場の状況が一段と急速に改善すれば、現在想定されているよりも早い時期に実施される可能性があると言及する一方、景気が期待を裏切る動向となれば後ずれすることになる可能性があると再表明しました。
これはバーナンキ前FRB議長の手法を踏襲しているものです。結局、政策決定は、今後の労働市場の経済指標次第ということです。これは、今現在のスタンスは中立で、今後の政策は条件次第というものですから、中立のコメントです。
そして、その労働市場については、賃金の伸び悩みが示唆するほどに労働市場にはスラック(余剰資源)がない可能性もあると指摘しつつ、労働市場には依然、多大なスラック(緩み)が存在すると強調しました。
この多大なスラックが今後、引き締まれば早期の利上げ、改善されなければ利上げは遠のくということになります。これも基準を提示しただけで中立といえますが、今現在の労働市場の多大なスラックがあるという認識からすれば、今は、利上げはできないということを示唆していることからハト派寄りともいえます。
イエレンは労働市場のスラックの見極めが難しいとしていますが、今回の講演でも、フォワードガイダンスの改定で、政策決定は、失業率といった単一の指標に基づかず、労働市場や物価動向、金融情勢に関する幅広い情報を考慮して労働市場のスラックを判断するということを再度強調しています。

この労働市場のスラックを判断するための幅広い指標がイエレン・ダッシュボードといわれているものです。
このイエレン・ダッシュボードとしては、①失業率、②フルタイム希望者がやむを得ずパートタイム労働をしている場合を含めた「広義の失業率」、③半年以上失業している人の比率を示す「長期失業率」、④非農業部門雇用者の前月比増加数、⑤生産年齢人口に占める就業者と求職者の割合を示す労働参加率など19つの指標労働市場情勢指数(LMCI)が挙げられています。
今回、イエレンは、これらのうち重要な5つに絞って言及しています。①労働参加率、②広義の失業率(パートタイム就業者)、③離職率・新規採用率、④賃金インフレ、⑤長期失業です。
この労働市場のスラックを判断するそれぞれの指標の数字が低調な原因が、景気循環的なものか、構造的なものかで争いがあります。実際は、どちらか一方が寄与しているわけでなく景気循環的なものと構造的なものがそれぞれ寄与しています。
そして、問題は、その真偽は別としてイエレンがそのどちらの寄与度のウェイトが高いと認識しているかです。それが、今後の金融政策を予想する鍵になります。
景気循環的なもの寄与度のウェイトが高いとすれば、景気が回復すれば、労働市場のゆるみはひきしまっていくことになります。
一方、構造的なものウェイトが高いとすれば、いくら金融政策しても無駄で、労働市場は質的に改善しないことになります。GDPは労働力と労働生産性で決まります。ITによるイノベーションはピークアウトしており、労働生産性は構造的に低下しています。もし、労働参加率の低下が構造的なものであれば、アメリカの経済成長鈍化は構造的なものとなります。
また、GDPの7割は個人消費ですから、もし、賃金の低下が構造的なものだとすれば、個人消費は増えず、経済成長は加速どころか鈍化していくことになります。
イエレンは、労働市場のスラックに人口動態などの構造的な要因を認めながらも、結局は循環的なもの寄与度が高いとみなしているようです。本音は別として、FRBがアメリカの潜在成長率の低下(長期停滞)を認めるわけにはいきませんから、当然です。
しかし、実際、労働参加率や賃金の低下は、短期の景気の循環でなく構造的なものであることはチャートの相関をみれば一目瞭然です。
泥沼の米労働市場

その一番の大きな要因は、イエレンは触れていませんが、格差の拡大です。
労働分配率の低下はもはや構造的なものです。オバマに変わって富の再配分が期待されましたが、結局は無理でした。リーマン・ショック後のオバマ時代、株価は、低金利と量的緩和で数倍に膨れ上がりましたが、賃金が上昇したのは全従業員のうちの幹部5%だけです。かれらは自社株買いのストック・オプションによって巨額のキャピタルゲインを得ています。平社員は賃金が増えず、株主対応の一株利益上昇のためのリストラと、オバマケアと、価格破壊したITによる労働の代替のために、正規雇用を解雇されて、短期のパートタイム労働に従事しています。パートタイムによるワークシェアによって雇用者数は見かけだけ増加しています。
上位5%が得る報酬の額がでかいので賃金は平均でみると実体がみえません。経済成長や景気回復のために必要な個人消費の鍵を握るのは上位5%ではなく、大多数の中間層や貧困層です。
労働分配率を上げるのは中央銀行の金融政策ではどうにもならず、政治の問題です。
民主党と共和党の対立、ティーパーティの台頭、民主党のクリントンを始めとする右傾化で、今後は政治的に解決することは困難だと思います。中間層や貧民層は多数派で選挙では強いはずですが、日本同様、メディアによって右寄りにコントロールされています。その怒りの矛先は富裕層ではなく、隣国やマイノリティに向けられるように洗脳されています。
格差が拡大して、賃金はあがりません。消費性向の強い中間層や貧困層の消費はアメリカの景気を左右しますが、賃金があがらない以上、ローンで買い物をするしかありません。サブプライム層は、リーマン・ショック前は家、今は自動車をローンで買っています。そして賃金が上がらない以上、その多くが、利払いが厳しくなってきて、不良債権が増加してきます。
金持ちは働いた労働所得よりも、株ETFなどで得た資本所得のほうが労せず大金を得られるので勤労意欲が低下していきます。それが早期リタイアを増加させます。金持ちの子供は親に寄生してモラトリアム期間が長くなり働きません。

このようにアメリカ労働市場のゆるみは構造的な要因の寄与度のほうが大きいのですが、イエレンは立場もあり、循環的なものが強いとしています。
この認識と結果のズレの意味することは、いくら利上げを後のばしにしても、一向にゆるみは改善されないことになります。
それでもFRBは高貴の嘘で、このゆるみは循環的なもので一時的なものだというしかありません。
ゆるみが構造的なもので、低金利政が無駄だと認めることは、アメリカの成長は終ったということと同義だからです。
この高貴の嘘のために、利上げは先延ばしするしかありません。


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[ 2014/08/24 11:55 ] おすすめ | TB(0) | CM(0)
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