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シェール革命、期待と現実の落差


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2050年までのエネルギー見通し【ピークオイル】
米国エネルギー省(DOE/EIA) Annual Energy Outlook 2012 (June 2012)、エネルギー見通し年鑑2012年版 (pp.59)

ゴールドマン・サックスは今回の金の暴落で、もはや、金は安全資産ではなくなった、これからの安全資産はシェールガス関連の資産になるだろうと言ってます。シェールガスの未来はバラ色で、今年後半からアメリカは力強い経済回復をするそうです。そうなると安全資産としての金の需要はなくなるそうです。
果たして、本当にそのようなバラ色の未来があるのでしょうか?

英国の学術雑誌ネイチャー(Nature)で、英国政府の元科学問題顧問のデヴィッド・キング氏はシェールガス井の生産性は最初の1年の採掘で60~90%低下すると力説しています。
「近年の複数の報告書は、シェールガスの埋蔵量と生産量はかなり過大評価されているとのべている(ref. 12)。たとえば、バーネット(Barnett)シェールガス田やフェイエットビル(Fayettvill)シェールガス田では、過去の長期の生産量推移が判っているが、年間の生産減退率が極端に大きいことが明らかになっている。地質コンサルタントのアーサー・バーマン(Arther Berman)は、テキサスのシュガーランドにあるラビリンス・コンサルタント・サービスの部長であり、シェールガスについての世界的なエキスパートであるが、これらのシェールガス井の年間減退率は60~90%の範囲にあるとしている。5年も経ったシェールガス井のうちの30%は、急激な減退と天然ガス価格の低落で採算がとれない。」
Nature論文 石油は転換点を越えた
oil's tipping point has passed

シェールガス井は生まれた瞬間からものすごいスピードで老化衰退していくようです。シェールガスは全米に分布しているように思われていますが、実際のガス田は点で集中しているようです。いままで最大の生産力を誇っていたヘインズビルが減退しています。埋蔵量がたくさんあっても輸送や採掘コストから採算がとれるガス田はすでに掘り尽くしているようです。マーセラスとイーグルフォードが頭打ちになると、アメリカ全体ののシェールガスは衰退してしまうようです。
アメリカのエリア別シェールガス生産量の推移

シェールオイル(タイトオイル)はもっと減退率が高いようです。しかもバッケン油田頼みです。
そのバッケンの油田生産井の減衰も著しいです。
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シェールガス革命は「つくられた」もの

また、ガスの掘削装置であるリグの稼働数も減少しているようです。
「稼働リグ数が2011年夏をピークに減少(図表1)。本年3月末には天然ガス稼働リグ数が400基を割り込み。300基台は1996年2月初以来。」
米国天然ガス生産に翳り~低迷する稼働リグ:藤井英彦の視点 日本総合研究所

フランスの新聞ルモンドが発行する国際総合オピニオン紙「ル・モンド・ディプロマティーク」でも批判的な記事が出ています。
引用↓
「ニューヨーク・タイムズは、石油会社の発表は、「故意に、不法なまでに採掘生産量と埋蔵量を多く見積もっている」
「地下の頁岩からのガスの抽出は石油会社がそうみせかけているよりももっと難しく、もっとコストがかかるはずで、その証拠として、この問題について業者間で交わされた数百の電子メール、資料ばかりでなく、数千の採掘抗について集められたデータの分析報告がある」

「石油会社に備蓄量を好きなように計上することを許可しており、独立機関による調査は行われないのである」

「これほど急激な生産性低下では明らかにわずかな収益しかもたらされないことになる。ガス井が涸れてしまうと作業員たちは大急ぎで他のところへ採掘に行って生産量のレベルを維持し、資金返済に充当しなくてはならない。条件が整えば、このような自転車操業で数年間は人の目を欺くことができる。」

「採掘は猛スピードで資本を食いつくし、生産が行き詰ると業者に借金の山の上を残してきた。この生産量の低下で経営者たちの懐を痛めないようにするために、企業は次から次へと汲み上げなくてはならなくなり、涸れた油井の分を他の油井で補うのである。他の油井も明日には涸れるだろう。悲しいかな、遅かれ早かれこういう図式は壁に突き当たる。現実という壁である」。

「水圧破砕によって得られた宝、シェールガス・シェールオイルがあるにもかかわらず、現実の埋蔵量は年間推定で4.5ないし6.7%のペースで減少している。」
↑ ここまで引用
大いなるペテン、シェールガス


シェールガスのアメリカの実体経済への寄与度は低いようです。

シェール関係の雇用者数は伸び悩んでいるようです。
「石油ガス採掘業の雇用者数が昨年央来、増勢鈍化。」
米国天然ガス生産に翳り~低迷する稼働リグ:藤井英彦の視点 日本総合研究所

また、シェールガスのGNPへの寄与度は低いようです。産業界全体でも、鉱業部門と間接的な化学業界を含めて恩恵は小さいようです。
「天然ガス ・ 原油の生産量は 40 年ぶりの高水準だが,これらの掘削業を含む鉱業部門全体でみても,過去2 年間における実質 GDP 成長率への寄与は年率換算で 0.1%に満たない。天然ガスや原油だけでは付加価値が低いためだ。しかし産業界への恩恵を軽視すべきではない。たとえば米国の石油化学製品の生産コストは,シェール革命によって中東並みになったという報告がある。」
米国経済の光と影
しかし ↓
「米製造業のなかで天然ガスを最も多く利用するのは化学業界で、シェールガス革命は本来、化学業界の景気を真っ先に押し上げるはずだ。だが、化学品製造業の生産は09年以降の景気回復局面で8%程度増加しただけだ。これは製造業全体の生産増加率(約21%)を大幅に下回っている。米製造業の売り上げに対する天然ガス消費金額の比率は意外に小さく1%以下だ。天然ガス価格の大幅下落にも関わらず、石油、ガソリンの価格や電力料金などが下がっていないということも、産業界全体への影響を限定的なものにしているようだ。」
「シェールガス革命」は期待先行の感 JA共済総合研究所

結局、シェール革命はアメリカ経済がまだまだ成長すると見せかけるための虚構のシナリオにすぎないと思います。
これからますます増え続けるアメリカの国家債務の利払いやその借り換えを消化するためにはそれを上回る成長がなければなりません。
名目GDP成長率が名目利子率を上回れば財政赤字は維持可能であるというドーマの定理からすれば、アメリカが今後も借金をしながら大量消費するという不労所得の贅沢な生活水準を維持するためには経済の成長神話がどうしても必要だったのです。
そのために期待されたITバブルや住宅バブルが弾けた今、最後のバブルの夢をシェールガスにかけているのかもしれません。
また地政学的なエネルギー戦略からもアメリカは今後はエネルギーで自給できると思わせる必要があります。実際、アメリカの中東からの原油の輸入は今でも年々増えているのですが、アメリカが中東への影響力を低下させ軍事費を抑えることができれば、財政負担減になります。
またアメリカがエネルギーを自活できるとすれば原油価格上昇に歯止めをかけることができます。
アメリカにとって原油価格の低下は、ガソリン以外のものへの消費を増やし景気への支援材料になります。原油価格を抑えるためにもシェールブームを誇張する必要があったのだと思われます。
アメリカのシェールガスに強気の予想をするIEAは、そもそもオイルショックのときにOPECに対抗してつくられたものです。
価格決定権を中東から取り戻すのがその目的ですが、そのIEAのシェールの予想は割り引いてみたほうがよさそうです。


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[ 2013/05/01 17:12 ] おすすめ | TB(0) | CM(0)
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