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6月の利上げはあるか UPDATE


金相場は、当面、米国の利上げ観測に左右されると思います。
来週の議会証言で、イエレンFRB議長は、利上げは経済指標次第ということを再度確認する発言をすると予想します
FRBのインフレターゲットは2%ですが、現在のインフレ指数はそれを大きく下回っています。
FRBがインフレ指標として重視している個人消費支出(PCE)価格指数のうち食品とエネルギーの価格を除いたコアPCE価格指数は、昨年12月は前年同月比+1.3%です。前期比四半期ベースでみると、2014年は、1Q(+1.3)、2Q(+2.0)、3Q(+1.4)、4Q(+1.1)と低下傾向にあります。
そこで、今後の期待インフレ率次第ということになりますが、消費者物価指数の先行指標である1月の米卸売物価指数は市場予想を大きく下回って-0.8%と大きく落ち込んでいます。原油安の影響を除いたコア指数も-0.1%でした。
米フィラデルフィア地区連銀が13日に公表した四半期エコノミスト調査では、コア個人消費支出(PCE)価格指数の上昇率が、第1四半期は1.2%と、前回調査の1.7%から下方修正されています。
市場が推測する期待インフレ率を示す指標とされる、普通国債とインフレ指数連動債(TIPS)の利回り格差であるブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)も全般的に低下傾向にあります。
ミシガン大学が社会調査している消費者期待インフレ率も低下し続けています。

このように、市場でも社会調査でも期待インフレ率は低下傾向にあります。
これから、期待インフレ率が上昇するかいなかは、結局、原油価格次第だと思います。エネルギーの価格を除いたコアPCE価格指数も輸送費などのコストで間接的に原油安の影響を受けます。
IMFラガルド(経済音痴?)やFRB関係者は政治的な配慮からか、原油安はコアインフレにたいして影響しないと強気な発言をしています。しかし、インフレ期待が抑制されていると仮定した条件下では、総合インフレ率が 1%ポイント下落するとコアインフレ率も0.2%ポイント低下するという見方があるようです。
最近の原油価格低迷をめぐる 7 つの疑問
一部、原油安は、個人消費増に寄与し、結果、景気がよくなるので、将来的にコアインフレ率を押し上げるという都合のいいシミュレーションもあるようですが、年末年始の小売売上をみる限り、原油安はたいして個人消費の追い風になっていないようです。

原油安が米国経済にとって+か-かは、米国内でもポジションによって対立があるようです。
陰謀論的にいえば、金融のロスチャイルド(民主党)FRB VS 原油のロックフェラー(共和党)といったところでしょうか?
ドル高は、企業業績を圧迫します。また、原油安はシェール企業を痛みつけます。
シェール関連投資など固定資本投資はこの1~2年で20%近い増加率で、製造業全体の投資に匹敵する規模となっているそうです。また、雇用についても、雇用者数全体に占める鉱業のウエートはわずかとはいえ、ここ数年、非農業部門の雇用者増加分の3分の1程度が、鉱業を中心とする6州の寄与で占められているそうです。
そのため、ドル高・原油安は、実業界のメインストリートからは不評です。
しかし、ドル高・原油安は、ウォール街には好評です。原油安による低金利継続は社債による自社株買いをアシストします。また、ドル高によって資本流入を呼び込み株高を続けたいのが投資銀行やヘッジファンドです。
ゴールドマン・サックスのS&P500の目標は、2015年末に2100と他行に比べて控えめですが、利上げが先送りなら2300を超えると予想しています。
ゴールドマン・サックス・グループのゲーリー・コーン社長は、海外の経済の弱さと米国内のインフレの鈍さが理由に、今年利上げをしようとする米当局は困難に直面するだろうとの見方を示しています。
ゴールドマンの最近の原油売り煽りは異常です。原油1バレル=39ドル予想に変わりはないとして、最近の反発は個人投資家の間違った買いだと断定してイライラしています。
最近はゴールドマンの威光も落ちたのか、予想を出しても個人投資家の提灯のリアクションが悪くなってきているのが目立ちます。
原油価格が上がるか、下がるかは政治色が強いものですが、需給も無視できないものがあります。
いまは100万バレルほどの供給過剰があるといわれていますが、年後半には徐々に逼迫して、それに伴い原油価格が上昇していくというのがコンセンサスです。
しかし、その上昇のタイミングには争いがあります。
その早い、遅いで、先物の買い戻しのタイミングが変わってきます。それは、期待インフレ率にも影響してきます。
原油安に誘導するためにOPECに対抗してつくられた国際エネルギー機関(IEA)の今年の原油の世界需給見通しは、「1~6月が日量30万バレルの供給過剰、7~9月が日量120万バレルの供給不足、10~12月が日量160万バレルの供給不足」という内容です。
同じく原油安に誘導したい、米エネルギー情報局(EIA)の見通しは、米国の原油生産量は2015年5月頃まで増加を続けるが同年9月までに減少に転じ、2015年後半に入ってから再び上昇に向かい、原油価格は、2015年第2四半期までに底値を経た後、徐々に上昇に向かうというシナリオです。
両者に共通するのは、シェールの減産調整には時間がかかり、年前半は供給過剰で原油安、年央から需給が逼迫して、年後半に原油がリバウンドするというものです。
ゴールドマン・サックスの予想もこれに沿ったものです。
この予想どおり、年前半まで原油価格が上昇しないなら、インフレ期待も上がりにくいので6月の利上げも先送りになる可能性が高いことになります。

一方、OPECの予想によると、アメリカの原油生産の減少はもっと前倒しで、今年6月までに米国の産油量は日量60万バレル程度低下するとしています。
シェール層開発最大手で、最も速いペースで成長しているEOGリソーシズ は、大幅な掘削削減が各国政府の予想より速いペースで進み米国の原油生産は今年減少するとの見通しを示しています。
EOGの見方は、米国の原油生産が増加すると予想する米エネルギー情報局(EIA)や国際エネルギー機関(IEA)などの大方の見通しとは対照的に、原油相場が急速に回復する可能性があるとし、現在の下落傾向は「短期的なもの」であると指摘しているようです。
米シェール開発最大手EOG、原油生産は今年減少すると予想

どっちの見方が正しいか判断するのは難しいところですが、すでにシェール生産量は、昨年11月中頃から減少が始まっており、今年1月になってその減少が顕著になっているという指摘もあります。
第15回 2015年NY原油価格見通し 年末70ドルへ
この推測が正しければ、OPECの言い分が正しいことになります。
稼働油井数が昨年の1600から目先1000まで大幅に減少しているのに、生産量をキープしているのは、スクラップ&ビルドで生産性の高い地域の以外のリグを減らしているという見方もできますが、それでも、主要生産地域のリグも減少傾向にあります。
第13回 否定された「稼動リグ数減少→シェールオイル生産調整→原油価格反発」のシナリオ
生産量が減っていないのは、従来型の油田で増産してシェールの落ち込みをカバーしているという見方もあります。
第14回 統計が示す2つの鍵。原油価格の本格的な反発は2015年後半に
どっちにしろ、シェールの油井の寿命は短いので、効率のいい油井だけにリソースを集中して生産するのでは先がありません。また、寿命が近づいている従来型油田で無理な増産することは、油井を痛めて、さらにその寿命を短くすることになります。
もっとも、それは半年よりももっと先の話です。
しょせん、米国のシェールは米国の従来型油田の20%程度にすぎませんから、多少減っても大きな影響はないといえます。
今現在、リビアでは、海底油田を除けば、ほぼすべての油田からの供給が止まっていて再開のめどがたっていません。
リビア原油輸出量が、日量7万~8万バレルまで激減しているのに、今現在、100万バレルもの供給過剰があります。この余剰は、シェールの大幅減産程度では補えないと思います。
そうなると、供給ではなく需要、すなわち、中国次第だということになります。
日本の右翼金融メディアの論調では、原油安の理由として中国の景気減速がよくあげられていますが、実際、現時点では、中国の原油の輸入量自体は増加を続けています。
対米従属で外交的に孤立しつつあるサウジが対中国でシェアを失っていますが、かわりにロシアやイランなど東側諸国が供給を増加させています。
中国は現在、原油消費量の60%を輸入で賄っています。
中国は国土の割に海岸線が短いので、米海軍による海上封鎖の恐れという安全保障上の問題があります。
そこで、石油輸出国機構(OPEC)が基準としている純輸入量90日分を備蓄する体制を整えようとしています。
今現在はその3分の1しか備蓄が終っていません。
中国は、1億7000万バレルの貯蔵が可能な2期備蓄基地の建設を2020年までに、3期計画を2020年までに開始する意向を示しています。
最近の原油安を利用して、この備蓄を積極的に増やしていたようです。
しかし、その中国に向かうタンカーが、ここにきて、この5ヶ月で一番の低下を見せているようです。
Chinese Oil Re-Stocking Is Over: Inbound VLCCs Drop To 5-Month Lows
とりあえず、安値での備蓄の積み増しは一段落したようです。
中国の買いが一段落したことで、原油の供給過剰は長引きそうな感じです。
原油価格がもし需給に忠実であるなら、原油価格の低迷は長期化して、インフレ期待もあがらず、6月の利上げも先送りになりそうです。
今年のFOMCでの投票権を持つメンバーで、タカ派が大幅に減ったことも利上げ先延ばし観測の根拠となりえます。
ハト派とタカ派
さらに、世界経済に依存するアメリカ経済が、都合よくデカップリングすることはありません。世界中がデフレ圧力に晒されているのに、米国だけがそれに影響されずにインフレ率が上昇するというのは考えにくいと思います。しかも、いま現在は異常なドル高です。この点でも、財やサービスの多くを輸入やアウトソーシングに頼る米国にはデフレ圧力に晒されます。
中国は7月から為替介入をしていないという報道もあります。外貨準備のドル買い(ドル債に交換される)が減っていることになります。ベルギー経由で米国債を買っている疑惑もありますが、中国は、米国債の買いを減らす傾向にあるのは間違いないようです。
買いが薄くなっているこのタイミングで早めの利上げをすると、流動性の低下している米国長期債の利回りが急騰する危険もあります。
金価格は、スイス、ウクライナ、ギリシャ発の信用不安がとりあえず落ち着いたことで、再び、米国債先物と相関を取り戻しています。
利上げ観測が後退すれば、米国債の利回りも再び低下を再開して、金価格は底打ちすると思います。


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[ 2015/02/21 23:58 ] おすすめ | TB(0) | CM(0)
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