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金利上昇と金価格


このブログのメインシナリオは、米国経済は回復せず、利上げは先延ばしなるというものです。
もっとも、セカンドシナリオも覚悟しないと行けない状況になってきました。

最近の雇用統計の数字をみると、米金融当局は、6月利上げを正当化するために、景気回復を無理やり既成事実化しようとしているようにみえます。
QE3を導入するときも、争いがありました。その当時、景気は小康状態で特に悪くなかったからです。市場予想ではQE3はないだろうという声のほうが大きかったと思います。
しかし、QE3開始直前に雇用統計など悪い指標が続いて、結局、景気が悪いことを理由に、QEが開始されました。QE3開始決定したあとで、開始の根拠とされた悪い指標は軒並み上昇修正されました。
今はそれと逆の状態です。
GDP成長率などは、景気が悪いことを理由にQE3を開始した頃からほとんど加速していません。
所得増税の影響がなくなること、財政の崖、債務上限などの問題のとりあえずの解決、株高の資産効果、イスラーム国空爆による防衛費増、原油安などで期待された2014年の成長率は期待ハズレに終わりました。
そして、2008年でピークアウトした米国の労働人口ボーナス期間は2014年で完全終了です。これからは人口動態が構造的に成長率を押し下げます。
アトランタ連銀の試算値によると今現在(2015年の第1四半期)のGDP成長率は1.2%増と潜在成長率を下回っています。
個人消費、住宅投資、設備投資、製造業新規受注、企業収益など、マクロ指標は、悪い数字が続いています。1月の平均賃金上昇も、最低賃金引き揚げによるもので一時的なノイズにすぎませんでした。
労働市場の指標も民間調査のものは悪化が続いています。労働市場は、リーマン・ショックの頃から、人口増分を除けばほとんど回復していません。フルタイム労働を生産性が低く賃金の安い単純労働のパートに置き換えることでなんとか、形式的な数字を維持している状態です。
それでも、労働省発表の雇用統計一発で、今現在の米国の景気がいいことになっています。
これは、6月利上げを強行する意思を示しているとみることもできます。
もちろん、金利上昇は、借金まみれのアメリカ経済に打撃を与えます。中央、地方ともに積み上がった政府の累積債務の利払い負担が増します。企業は、自社株買いで社債を買いまくって実質債務超過状態です。
家計も住宅ローン、教育ローン、自動車ローンに負われています。この支払い負担は大きく、原油安になっても個人消費は増えていません。そのため、逆にクレジットカードの消費者ローンは減少しています。
借金まみれで成長が弱く実体経済に利上げの体力がないのに、それでも、米当局が6月の強行利上げにこだわるのは、米経済が強いというアピールのためでしょう。
米ドルの準備通貨、決済通貨として需要が減少し、そのため、米国債の買いが減少しています。ゼロ金利やQEで大量に発行したワールドダラーが不要になって本国に還流しています。利上げ強行はそのためのドル高ではないということを示したいのかもしれません。
また、金利上昇は、収益が悪化している銀行を助ける目的でもあります。
さらに、FRBのメンバーは、バブル崩壊の責任を負いたくないはずです。その自己保身のための利上げともいえます。

しかし、利上げとそれに伴うドル高で、実体経済が破壊され、株価が暴落した場合は、利上げに対する世論や市場、実業界からの風あたりが強くなります。多くの労働者を抱える実業界を敵に回すと選挙に勝てません。社会が不安定になると、将来的に、反動でポピュリズムの左派政権が誕生するおそれもあります。それは銀行家や資本家の首を占めることになります。
このため、たとえ6月に利上げをしたとしても、そのあとの引き上げのペースは極めて緩やかなものになるでしょう。
そして、過去のパタ-ンからして、結局、景気悪化、株式市場底抜け回避のために、すぐにゼロ金利に戻さないといけなくなると思います。市場予想と金融当局の見通しの違いは、ここにあります。米当局はアンカリングのために高めの目標設定をしていますが、市場は過去のFRBの下方修正の歴史を冷静にみています。

米国の金利が上昇すると、ドル建ての金価格にとって逆風になります。
ドル建て金と米国債利回りは高い逆相関の関係にあります。
その理由は、教科書的な説明によれば、金は通貨であり、資産保全効果がある資産であるものの、利息を生まないので、他の資産が収益を生んでいる場合には金の保有コストが生じ、投資のうまみが減少するからとされています。
金の需要が、もっぱら投資目的であるとみた場合は、この理論が成り立ちます。
この逆相関が、欧米の投資家需要向けの金ETFが開発されてから特に高くなったのは、金の投資需要としての側面が強くなったからでしょう。
国際的な金価格がもっぱら米国の投資需要で決まると仮定した場合、米金利が金価格を決定する最大要因になります。

もっとも、金は投資目的だけに使われるものではなく、宝飾品需要や産業需要といった消費者商品でもあります。また、中銀の需要もあります。
金の需要は、宝飾品需要と産業需要で過半数を占めていますが、これらは、金利の影響を受けません。むしろ、統計的にみれば金利上昇局面(好景気、インフレ期)のほうが、需要が増す傾向にあります。中銀の需要も金利の影響を受けません。
金と米国の実質金利:その実態を検証

米国の金利が上昇した場合、米国内での金の投資需要は減少します。
その一方で、ドル建て金価格が低下することで、インドや中国のバーゲンハンターによる現物消費需要が活性化します。ここうしてアメリカからアジアへの現物金移動がさらに加速しえいきます。
こうして、米国の投資需要よりも、アジアの消費需要のほうが価格決定で重要になってきます。そうなると実質金利と金価格の逆相関関係も薄れていきます。
また、アメリカ同様、金を売っていた西側諸国の欧州や日本も、買いに転じてくると思います。通貨安ヘッジ需要が増すからです。ユーロ建ての金、円建ての金は上昇傾向にあります。
アメリカの利上げによってドル高が進むも、ドル建て金価格下落のスピードが、アジアの現物買いや産金コストの関係による減産による需給のタイト化で減速し始めると、円建て金やユーロ建て金などドル建て以外の他国通貨建て金価格は、その通貨安のスピードのほうが早いため、差し引きして上昇することになります。
米国の金利上昇により、世界中の他の通貨に対してドルの独歩高になった場合、アメリカ以外の国の現地通貨建ての金価格は上昇を続けます。そのため、アメリカ以外の国では金の投資需要が増します。それは、さらに米国からの現物金の流出を加速させて、最終的に米国の金価格決定権を喪失させます。

以上のシナリオは、このブログのメインシナリオではありませんが、3月フォワードガイダンス変更、6月利上げがあった場合、金相場は当面厳しくなることを想定したセカンドシナリオです。
このセカンドシナリオの場合は、短期的に我慢が必要になりますが、この場合であっても中期的、長期的にみれば、西から東への現物金移動を加速化させて、市場の価格決定のイニシャティブが移動し、金価格はじょじょに反発していくと予想します。
上海、香港、シンガポールなどの市場が中心になってアメリカの先物市場から金価格決定権を奪い返すと思います。


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[ 2015/03/08 19:55 ] | TB(0) | CM(0)
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