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大詰めのTPP交渉


環太平洋連携協定(TPP)交渉が、大詰めになってきました。
オバマはTPPを成立したいのですが、議会は、身内の民主党と共和党のティー・パティーなどの極右が反対しています。一方で、共和党の大多数の保守議員は賛成というねじれ構造で複雑です。
TPPは、国内の利益を最優先する純粋な保守右翼が反対しているだけでなく、リベラル左派からも弱者保護の観点で反対されています。
TPPにより利益を得るのは、もっぱら、自由競争の勝者である大企業とその所有者である資本家です。
議会の反対があるので、TPPの成立には、大統領貿易促進権限(ファスト・トラック権限)(TPA)の法案成立が必要とされています。
米国憲法では、大統領は、条約を締結する権限を有していますが、日本同様、上院の承認を得る必要があります。
もっとも、TPA法により、一定の条件を満たす限り、議会側は行政府の結んだ外国政府との通商合意について、個々の内容の修正無しに一括して諾否のみ決することとされ、議会の影響力を弱められました。
このTPA法は、違憲の疑いもあるので現在廃止されています。
オバマは、TPP交渉加速のため議会に対しTPA復活を求めていますが、議会では上記のとおり、賛否が割れています。
現状では下院で過半数を得ることは厳しいとされています。
【TPP交渉の行方シリーズ33】TPA法案の行方を予測する- 下院の踏ん張りで是非否決してほしい‐15.04.28(4月-7)

TPA法案を通すためには、共和党のティーパーティー議員か、民主党のリベラル議員を攻略して票を得る必要があります。
TPPの、最大の目的は、アメリカのアングロサクソンやユダヤ資本家の利益をさらに拡大することにあります。
そのため、大多数の共和党の議員からは歓迎されています。
経済圏のルールを自分たちの有利なように定めることができれば、利益の独占を更に拡大させることができます。
まずは、アメリカのいうことをよく聞く、日本などの従属国を巻き込みTPPを成立させてイニシャティブを握ります。プーチンが指摘するように、アメリカが必要としているのは同盟国ではなく従属国です。
その上で、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の国々を巻き込んでFTAAP(アジア太平洋自由貿易圏)を実現したいという狙いがあるようです。
このアジア太平洋自由貿易圏は、中国の習近平が提唱する新シルクロード経済構想や、ロシアのプーチンが提唱するユーラシア経済圏(リスボンからウラジオストクまでを、一つの欧州として統合するという)に対抗するものです。
中国とロシアは、陸続きである欧州からアジアまでを統合した、経済ブロック圏を実現したいという点で共通の利害がありますが、地理的に不利な位置にある米国はここからはじき出されることを懸念しています。それは米国覇権の黄昏を加速させることになります。
そのため、ユーラシア大陸だけでなく、太平洋を含めた経済圏を成立させようと抵抗しています。
最近では、中国の経済成長や、AIIB構想の加速などを通じて、ユーラシアに経済の中心がシフトしようとしていることから、ティー・パーティなどTPPに反対している共和党の一部保守層が、対中国を重視して、TPA法案賛成に寝返る可能性があります。

また、リベラルの民主党議員がTPA賛成に寝返る可能性も高くなってきています。
3月の米貿易赤字は、6年5カ月ぶりの大きさとなりました。
少し前までは、情弱なエコノミストやメディアが、シェール革命により、米国の貿易赤字は減少していくと鼻息があらかったのですが、シェールバブルのメッキは早くも剥奪し、貿易赤字は拡大の一途にあるようです。
市場予想を大きく下回った、米国の2015年第1四半期の実質GDP速報値は、すでに建設支出の大幅減により下方修正される可能性が高いことが指摘されていますが、貿易赤字の大幅な赤字により、+0.2%から、少なくとも、-0.5%に下方修正されると試算されているようです。
大量消費が大好きなキリギリスであるアメリカ人は、ドル高で、輸入品が安くなったことで働かなくなりました。製造業はどんどん弱り、製造業の労働者の仕事は失われて、労働生産性は低下しています。製造業の弱体化は、宇宙開発や軍事面でも問題が生じてきています。アメリカのロケットやミサイル技術は、そもそもナチスからのお下がりですが、時代がすぎ、最近ではロシアに水を空けられています。また、造船技術の衰えは、軍艦の建造などにも影響がでてきているようです。
商品が安く輸入できるので、小売業のアルバイトの雇用だけは好調です。しかし、国全体の経済のパイはどんどん縮小しています。
これ以上のドル高は、貿易赤字を拡大させて、景気悪化を加速させます。景気悪化で犠牲になるのは弱者です。
そのため、為替操作条項を追加することを条件に、TPAの賛成に回る民主党のリベラル議員がでてくる可能性があります。
為替条項は、もちろん、日本を対象としているので、今の円安ドル高は巻き戻される可能性が高くなります。
そうなれば、日本株は暴落する危険がでてきます。
もっとも、安倍政権は、とりあえず、選挙がひと通り終ったこともあり、多少の株安はOKとしているのかもしれません。そんなことより、米国の利益が優先されるのでしょう。
そもそも、円安でも、輸出数量は増加していませんし、製造業の国内回帰の動きもほとんど観測されていません。リフレ派のいっていたJカーブ効果はありませんでした。大企業の輸出企業は、為替益で業績を拡大させていますが、その収益のほとんどは海外の株主(資本家)に還元されて(一部が大企業のホワイトカラーや株主)、国内の中産階級以下にはトリクルダウンしてきていません。実際、自動車売上もずっと減少していますし、トヨタの下請けなどは悲惨な状態です。
そうなると、円安による景気悪化のほうが問題になってきています。
円安による公益条件の悪化により、国内の大多数の労働者の実質賃金は安倍政権になってから低下が続いています。そのため個人消費もずっとマイナスです。個人消費はGDPの大半を占めます。結果、2014年の実質GDP成長はマイナスでした。アベノミクスは失敗でした。もっぱら、消費増税のせいにしてアベノミクス自体は成功だったとする弁は無理があります。
雇用も悪化しています。需要がありながら重労働かつ低賃金である介護や保育士などが不足していることから、有効求人倍率こそ改善していますが、正規雇用は失われています。
安部総理は、確証バイアスにより、指標の改善はすべて自分の手柄、悪化はすべて民主党など左翼の責任とする傾向が強いようです。
民主党時代の景気改善はすべて、麻生政権の手柄とする一方で、安倍政権時代の経済指標の改善はすべて自分の手柄としています。
経済は複雑なものであり、そのような単純な黒白の一元論の因果関係ですべてがきまるわけではありません。
先日の日中首脳会談でも、安倍政権は、前回の首脳会談以降、日中関係は改善しているとして自分の手柄であることをアピールしていましたが、習近平は、関係者の努力であるとしてします。
民主党が改正した、高齢者等雇用安定法により、13年4月1日から、高齢者雇用の義務付けられました。安倍政権になってからの失業率改善はこれが大きく寄与している可能性が高いと思います。
「アベノミクス批判への反論」が自ら陥った「統計の詐術」

安倍政権は、大企業の所有者である資本家に配慮して円安を続けています。そのため、資本家の影響下(株主&スポンサー)にあるマスメディアを利用することに成功して、目先では支持率を得て選挙に勝つこともできました。
もっとも、長い目でみれば、国内の大多数の労働者が従事する内需・サービス業の中小企業を弱体化する円安を放置していては、大衆もそこまで馬鹿ではないので、結局、支持を失うことになりかねません。
そのため、円安を巻き戻すことになるTPPの為替条項を飲む可能性がでてきます。
原油価格が再び上昇してきているので、円安を続けるとさらに公益条件が悪化して景気減速が加速するというのもあります。4月以降の経済指標の悪化は、消費増税のせいにはできなくなるので、アベノミクス自体の是非が問われることになりかねません。

そもそもグローバリゼーションや市場経済は、それ自体はわるいものはありません。
ジェフリー・サックスが指摘するように、グローバリゼーションは世界の貧困を減少させました。分業と交換が人類の文明を発達させてきたのは事実です。その延長で、国ごとに得意分野に特化するのは世界全体のパイを拡大させることにつながるといえます。
もっとも、市場競争に完全に委ねるのは問題です。競争は勝者と敗者をつくります。勝者と敗者は、乗数効果により、その質以上の差が結果でついていきます。
また、その勝敗は、能力や努力とった質以上に、運が大きく左右するので、その結果は公平ではありません。
公平云々の正義の問題は度外視しても、競争は放置すると、格差を拡大することで、競争による質や価格の選別担保機能が失われ、効率も低下し、経済全体のパイを縮小させる弊害がでてきます。
グローバリゼーションによって貿易が活性化することは、歓迎すべきことですが、それが行き過ぎると、結果として勝者となった大企業の総取りになって、弱者から搾取する構造になることは規制する必要があります。大企業は既得権益となって弱者の仕事を奪い、新規参入を阻害し、独占により消費者の利益も害していきます。
そのために、関税などの規制は必要です。
規制は既得権益者を守るものだから一律に悪だとみなすのが、新自由主義者(リバタリアン)の言い分ですが、既得権益者は弱者である場合がむしろ多いのです。
規制緩和によって利益を得るのが大企業などの勝者です。かれらはスケールメリットをいかして、さらに独占をすすめていきます。そしてロビー活動やマスメディア支配によって、政治をコントロールしていきます。本来、大多数の中間層以下の利益を代表するはずの民主主義は、少数派による資本主義の資本的多数決によって、歪められることになります。
そうして、大企業は自分たちが競争に有利になるようにルール(法律)を定めたり、運用(解釈)したりしていきます。そうして競争や市場が本来もつメリットである機能は害されていきます、
アメリカなどの大企業は、その規模や市場シェアから、すでにスタート時点で有利な状態にあります。TPPによって規制が緩和されれば、他国の弱小企業は当然に淘汰されることになります。そこに公平な競争はありません。
また、TPPはISD条項とセットです。
ISDは、協定違反によって投資家が受けた損害を、その国に賠償を求める手続を定めた条項です。この条約や、国内法に優先します。
このISD条項により、大企業は、国内だけでなく、他国の民主主義をもコントロールすることができるようになります。他国の議会が成立させた法律よりも、ISDが優先するからです。
このISDは、世界中の法学者などの法曹が、憲法違反、民主主義の否定、主権侵害だとして反対しています。
日本や韓国だけでなく、米国の法曹も例外ではありません。
TPPの条文案は、来週にも国会議員に開示されるようです。
市場のブル投資家は、週末の雇用統計によるいつものような一発逆転を期待しているようですが、来週のTPPの条文案開示に、為替条項が含まれていた場合に、いままでのブル相場が巻き戻される可能性があることも警戒する必要があります。


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[ 2015/05/06 14:15 ] おすすめ | TB(0) | CM(0)
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