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成長を阻害する格差拡大


OECD(経済協力開発機構)が、2015年5月21日に発表した報告書によると、世界の所得格差は過去最大レベルに達しているようです。
OECD加盟国における上位10%の富裕層と下位10%の貧困層との所得格差は、1980年代には約7倍だったのが、2000年代には9倍、今現在は、9.6倍まで拡大しています。
報告書によると、この所得格差拡大の主因として、パートタイムや臨時雇用契約の増加があげられています。
日本やアメリカでは、労働規制の緩和により、正規雇用を非正規雇用に置き換えたり、フルタイム労働をパートタイム労働に分割したりすることによって、失業率など表面上の数字は改善されています。
しかし、これによって格差が拡大しています。これが、経済成長を鈍化させる構造的な要因になっています。
小泉、竹中、石原、安倍、橋下らのポピュリスト保守リバタリアン政治家は、アメリカの保守派のように、既得権益という敵を設定し、それと階級闘争を繰り広げるというパフォーマンスで大衆の人気を集めてきました。しかし、彼らが設定する敵は、社会的弱者であり、経済弱者でした。
ポピュリズム政治家の台頭によって、民主主義の富の再分配昨日は歪められて、日本でもアメリカと同じように格差拡大が進んでいます。日本の貧困率は、米国と並んで先進主要国では最悪レベルです。
所得分配の不平等さを計るジニ係数でも、所得が国民の中央値の半分に満たない人の割合の「相対的貧困率」でも、日本の格差はOECD平均を上回っています。

このように所得格差が拡大していますが、資産格差の拡大はこれを凌駕しています。ピケティが指摘するように、資本主義の当然の帰結でしょう。
NGOのオックスファム(Oxfam)によると、世界人口の1%にあたる富裕層が持つ富は、2016年には残りの人口の99%が持つ富の合計を上回り、世界全体の富の半分を上回ることになるそうです。
格差が大きい発展途上国を除いたOECD加盟国においても、上位1%の富裕層は全体の資産の18%、上位10%が、資産の半分を占めるにいたっています。下位40%は総資産のわずか3%しか保有していません。
世界中の中央銀行の金融緩和政策により、実体経済の悪化に逆らうかたちで、株や不動産などの資産価格が上昇を続けています。
このため、持つものと持たざるものの格差はさらに拡大していくでしょう。

先週末、米国の4月の消費者物価指数のコア指数が市場予想を上まったことで、利上げ観測が高まり、ドルが買われました。
もっとも、この物価指数の上昇は、景気改善によって個人消費が高まったというようなポジティブなもの(デマンドプルインフレ)ではないと思います。
物価指数の上昇に大きく寄与したのは、医療費や教育費、家賃の上昇です。
アメリカでは、若者は正規雇用が得られず、低所得で安定した収入が得られていません。
そのため、結婚して世帯がもてません。長期ローンを組んで家や車がなかなか買えません。
アメリカでは、教育市場も自由放任の市場原理に委ねたために、学費が高騰しています。それに伴い、医師の人権費も高騰して、医療費の値上げが続いています。
また、金融緩和によって余った金が、不動産投資に向かい、賃貸用の集合住宅の建設が促されています。これによってバブルが発生して賃料が上昇しています
アメリカの不動産市場は、資本家による投資で新築は好調ですが、中古住宅市場は低迷しています。個人の住宅ローン組成率も伸びていません。賃金比の住宅価格レベル水準は過去最高レベルなので、持ち家比率は過去最低水準まで低下しています。
学費や医療費、賃料が上昇すれば、それ以外の裁量消費を減らさざるを得なくなります。

このように、リバタリアンが理想とする、自由放任(レッセフェール)による夜警国家経済は、格差を拡大させています。
それは、アダム・スミスのいうような「神の手」という万能で効率的合理的なものではなく、経済全体のパイの拡大を促進していません。
個々人が、利己的に利益を追求しても、合成の誤謬によって、全体の利益は促進されないのです。
アカデミー賞を受賞した「ビューティフル・マインド」のモデルになった数学者ジョン・ナッシュが23日、タクシー事故で亡くなられました。
ナッシュは、ゲーム理論における非協力ゲームの解の一種である「ナッシュ均衡」などの業績で知られ、ノーベル経済学賞を受賞しています。
社会を構成する個人が各々利益を追求した場合の結末をナッシュ均衡(点)といいます。これに対して、社会システム全体の福利厚生が最大限まで達成されている「最大多数の最大幸福」の状態をパレート最適といいます。
個々人が自己の利益のみ追求しても、功利主義的な全体の利益(便益)は促進されません。ナッシュ均衡は必ずしもパレート最適と一致しないのです。
個々人の利益と全体の便益を同時に達成する事こそが経済発展になり、そのために、市場にすべてを委ねるのではなく、政治による調整が必要になってきます。
個々人が利益を追求して競争する市場は価格発見機能などすぐれた面もありますが、競争が協力を阻害し、かえって非生産的、非効率になることがあります。
また、自由放任にまかせていると、その利点である価格発見機能がかえって害されることになります。
そこで、民主主義によって法律を作成して市場を規制することが求められます。
政治におけるパレート最適とナッシュ均衡

富裕層がいくら贅沢しても、消費できるサービスや財には物理的な限界があります。一方、消費市場の圧倒的な多数派である中間層や貧困層の消費性向は、富裕層よりも一般的に高いので、彼らの所得が増加して、消費が増えない限り、経済全体は成長しません。
アメリカや日本では、株や不動産といった資産価格が上昇しています。
日本では大企業の収益も好調です。しかし、日米ともに個人消費は低調です。賃金がほとんど上昇していないからです。
少数の金持ちが平均値を釣り上げているので、平均値でみれば、実質賃金はアメリカでは横ばい、日本では微減ですが、実際は、中間層以下の所得は趨勢的に減少が続いているようです。
日本でもアメリカでも小売売上はさえず、世界最大の小売業者であり、アメリカの貧困層が多く利用するウォルマートも今後の業績見通しに悲観的です。
リフレ派の理論によると、インフレ期待が上がれば、個人は、貯蓄するよりも、紙幣の購買力が低下するまえに消費するということになるはずでしたが、それが当てはまるのは、余剰な資産を持つ富裕層だけでしょう。実際、多くの中間層、貧困層の財布の紐が固くなっています。
格差拡大で消費性向の低い富裕層に資本が集中することで貯蓄率は上昇します。もっとも、富裕層は金融資産の多くをオフショアのタックスヘイブンに逃がすので、統計上の貯蓄率はそれほど目立って上昇はしてきませんでした。
しかし、最近では、インフレへの懸念と、リフレ政策に伴う財政規律低下による将来不安により、中間層なども切り詰めて貯蓄するようになってきているので、アメリカでも目に見えて貯蓄率が上昇してきました。

格差を是正し、中間層以下に富を再配分することで、消費性向の高い中産階級の消費を促すことが経済全体のパイの成長にとって最重要の課題ですが、そのためには、市場ではなく政治の役割が重要になってきます。
しかし、今現在、資本家によるマスメディア支配や右翼ポピュリズム政治家の台頭で、民主主義は機能不全をおこしています。
ダウンタウンの松本人志 は、大阪の住民投票「多数決(民主主義)で物事が決まるなら、世界は中国の思いどうりになる」と発言して話題になりました。その真意が「プレビシットの危険」や「多数派による専制」(トクヴィル)を示唆したかは不明ですが、頭数で勝負が決まる民主主義にすべて委ねるとすれば、人口の多い中国(中華圏、儒教圏を含む)が、世界のルールを作成できるようになります。
もっとも、現実として、中国は民主主義を採用していません。もし、中国のような膨大な人口と民族を抱える国が民主主義を採用したら、各々のエゴがむき出しになって、国は統一を維持できなくなるでしょう。
しかし、その中国では民主主義を採用している国で格差が拡大しているのに対して、中間層が増大して格差が是正されてきています。
民主主義の最大の利点であるはずの富の再配分機能も、画餅なのかもしれません。
チャーチルの、「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」という言葉は有名ですが、果たして本当にそうなのか。多くのリソースを無駄にした最近の日本の大阪住民投票の茶番劇をみても、民主主義には、ナッシュ均衡という市場原理主義と同様の、限界があるように思えます。

民主主義と過少消費理論
分配なくして成長なし


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[ 2015/05/25 13:57 ] おすすめ | TB(0) | CM(0)
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