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最大の問題は米財政危機


メディアは、今現在の世界経済の最大の懸念材料として、もっぱら、中国経済の減速とそれに伴う新興国危機をとりあげています。
少し前ですと、ギリシャを中心としたユーロ危機でした。それが沈静化したあとは、フォルクスワーゲン問題でドイツ叩きです。ロシア売りもありました。
しかし、世界経済の最大の問題は、米国の財政持続性だと思います。
グリーンスパンも、本当の問題は利上げではなく財政問題だと述べています。
米国の問題点をカモフラージュし、市場を欺き、ドルを延命させるために、ユダヤ資本家とその愉快な仲間である金融関係者、マスメディア、御用学者(クルーグマンを含む)らは、次々と他国の問題点をクローズアップしてきました。しかし、アメリカの財政に持続性がないことは明白です。

米国の政府債務残高対GDP比は110%で、イタリアの117%、ギリシャ170%、日本の230%を下回ります。
しかし、財政ギャップ(Fiscal gaps)という指標でみれば違ってきます。
財政ギャップとは、国債などの元利償還、社会保障費・軍事費などの支払いのために、毎年、追加が必要な税金額の対GDP比率です。
この財政ギャップは、レーガン政権時代、大統領経済諮問委員会の上級エコノミストだったローレンス・コトリコフによって提唱されました。17人のノーベル経済学賞受賞者を含む1200人以上の経済学者が、財政ギャップ会計を政府機関に義務付ける米連邦法を支持しています。
政府債務残高のGDP比でみればアメリカより悪いイタリアですが、財政ギャップでみれば、-2.3%と良好です。プライマリーバランスが黒字なので当然でしょう。欧州全体の平均は2.4%です。
これに対して、米国は10.5%です。日本も、中央・地方政府ベースで10.1%、一般政府ベースで15.0%と財政の持続可能性に赤信号が点灯しています。
最も財政の信頼性が高い国

米国政府は財政が持続可能であるとみせかけるために、財政悪化を軽視する長期の習慣をもっています。これは日本も同じです。ケインズ的な財政出動は需要不足を多少は補い成長の鈍化スピードを緩和させた側面がありますが、クルーグマンが指摘するように右翼が主張した富裕層を中心とした減税は成長をもたらさず、財政を悪化させただけに終わりました。

財政ギャップを埋めるためには、選択肢は、4つしかありません。支出を減らすか、増税か成長かインフレです。
高齢化による社会保障費増加は不可避で避けられません。切り詰めても支出は減らすことは日本もアメリカもできないでしょう。

増税は、日本では消費税率20%でなんとかなるようですが、アメリカは、連邦税、個人および法人所得税、消費税、社会保障税などの税率を58%あげる必要があるようです。
議会制民主主義をとる国家では、これは事実上不可能です。

それでは成長はどうでしょうか?経済成長にともなう租税収入の増加により財政再建を実現させるといういわゆる上げ潮路線は、ポジティブですし大衆の受けがいいものです。声が大きいマッチョな政治家や御用エコノミストらがいいだすと周囲は口をはさみにくくなります。
しかし、政治的には受けのいいこの上げ潮路線が、アメリカでも日本でも逆に財政を悪化させてきました。
幼稚で経済音痴なままごと政権である安倍内閣は、新3本の矢と称して、GDP目標600兆円と大風呂敷を広げましたが、早速、各方面から非現実的とつっこみをうけています。
ビル・グロスは、財政の維持のためには、米国の経済成長は、4%の名目成長率が必要だとしています。
しかし、この4%もかなり厳しい数字です。
アメリカは、人口はまだ増加しています。しかし、出生率自体は他の先進国同様、大幅に低下しています。移民だよりですが、これまで中心だったメキシコなどからのヒスパックの流入は減少して、中華系の移民に数で抜かれています。
中華系の流入は、中国の資本流出という側面もありますが、中国による米国資産買い漁りの側面もあります。この中国の移民も中国政府の方針次第では今後、減少に転じる可能性があります。ピケティが指摘するように、人口の増減は予想することが困難で、今の米国がこれからも人口が増え続けるという楽観的なシナリオには疑問があります。
しかも、人口は増えていても、労働参加率は低下しています。高齢化が主な原因ですが、産業の空洞化によって若者の生産性の高い仕事が減少しているのも理由として考えられます
コトリコフは、「アメリカの繁栄は老人が墓場へもっていってしまった」という発言を日本でしています。
実質GDP成長は、(全労働者の)労働時間+労働生産性の上昇率ですが、この労働時間は、これから先、楽観的なシナリオでも+0.4%程度しか期待できないそうです。
そうなると、生産性を伸ばすしかありません。
楽観的でマッチョな右翼系アメリカ信者は、アップルやフェイスブックに代表されるアメリカのイノベーションは他国とは違うという選民思想をもっています。また、世界中の優秀な学生を集める大学がアメリカにあるといいます。
しかし、他国の優秀な学生がみなアメリカに定住するわけではありませんし、アメリカ国民自体の高等教育への進学率は高騰した学費のために他の主要国に見劣りするようになってきました。また、高等教育機関に進学しない一般の若者の教育水準も先進国では最低レベルです。
ロバート・ゴードンが指摘するように、アップルやフェイスブックの革新は成長性にほとんど影響を与えていないと思います。逆にスマホやSNSは、いわゆる「時間泥棒」として、多くの国民の生産性を低下させている可能性すらあります。
イノベーションの死、成長の終わり

ロバート・ゴードンは、米国の次の四半期の成長率を、1.2%程度と予想しています。
過去11年間が、+1.0%ですから、これは多少、盛っているようです。
上げ潮派と違いネガティブな主張は批判されやすいので、ゴードンとしては、停滞した直近の10年よりは新たな革新がおこるように期待するというリップサービスでしょう。

労働時間の楽観的な数字の0.4%と合わせて、今後予想される米国の実質GDP成長の巡航速度は1.6%です。
JPモルガンのチーフエコノミスト、マイケル・フェロリは、生産性の伸び悩みと労働力人口の拡大鈍化で、米国の基調的な成長率は1.75%ないしそれを下回る水準に押し下げられたとしていますが、これと、整合的です。
もっとも、これは楽観的な数字ですし、今後のバブル崩壊の衝撃や、債務負担を考えると、マイナスになる可能性もあります。
どっちにしろ、+1.6%程度では、ビル・グロスのいう財政持続可能性に必要とされる名目4.0%に足りません。
そうなると、やはり、インフレ率上昇が必要になります。FRBが目標とする2%のインフレ率は財政の持続性のために必ず必要になります。
もっとも、アメリカのインフレ率は、CPIやPCEでみれば低下傾向にありますが、庶民の生活感覚でいえば、もっと高いともみることができます。
中国などの新興国のキャッチアップによって、モノの値段は下がっていますが、サービス自体の価格は上昇しています。学費や医療費、家賃などは高騰しています。
そのため、中間層以下の庶民の、裁量消費は減り、生活水準は低下しています。
モノの値段にしたところで、ピケティが指摘するように物価指数の計測は恣意的で難しいものです。
どっちにしろ、ディスインフレといわれながらも、日本もアメリカも、賃金の伸びを上回るペースで物価が上昇しています。
結局、ジャン・アタリがいうように、この国民の生活水準を低下させるインフレ税によって、財政を持続させるしか選択肢がないようです。これは政府や中銀に対する国民の信用を低下させます。ひいては、金が再び選好されるようになると予想します。


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[ 2015/10/09 13:31 ] おすすめ | TB(0) | CM(1)
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[ 2015/10/18 21:01 ] [ 編集 ]
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